決算が赤字になったとき、法人カードの申し込みをためらう方は少なくありません。検索すると「赤字でも通る方法」といった見出しが並びますが、この記事ではその書き方はしません。理由ははっきりしていて、法人カードの審査基準は、どのカード会社も公開していないからです。
代わりにこの記事では、公式サイトに書かれていることだけを整理したうえで、申し込み前に自分の手で確認できることと、通らなかった場合の現実的な選択肢をまとめます。確実な方法をお伝えすることはできませんが、確認できる材料を全部そろえてから動く、という進め方はご案内できます。

カード会社が公式に説明していること
三井住友カードの説明
三井住友カードは公式サイトで、赤字決算について次のように説明しています。「赤字決算は法人カードの審査において不利になりがちです。しかし、赤字決算であっても代表者の信用情報が良好であったり、財務状況が健全であったりする場合は、審査に通る可能性があります」。あわせて「決算書の提出が不要な法人カードもあります」とし、黒字決算が申込条件になっていないカードを選んで申し込みを検討するとよい、と案内しています(出典:三井住友カード 法人カードの審査と赤字決算/記事執筆時点)。
JCBの説明
JCBは公式サイトで、審査で確認されることとして代表者の属性情報や信用情報、企業の経営実績や財務状況などを挙げています。そのうえで「赤字決算の場合は、審査にマイナスの影響を与える可能性があるでしょう」としつつ、設立や開業から間もない場合について「審査に不利になるとはいい切れません」とも記載しています(出典:JCB 法人カードの審査/記事執筆時点)。
- 赤字は審査で不利に働きうると、カード会社自身が説明している
- ただし赤字だけで結論が決まるとは書かれていない
- 決算書の提出を求めないカードも存在する
- それ以上のこと(どの水準なら通るか)は公開されていない
赤字の中身を自分の言葉で説明できるように、決算書の読み方を一冊で押さえておくのも一つの方法です。
申し込み前に、自分で確認できること
1. そのカードは決算書の提出が必要か
まず必要書類を確認します。決算書の提出が求められるカードであれば、赤字の内容が申し込みの材料に含まれます。一方、決算書の提出を求めないカードもあります。三井住友カード ビジネスオーナーズは公式サイトで「登記簿謄本・決算書提出不要」と案内しています(三井住友カード公式サイト/同ページ内に2026年5月26日時点との注記あり)。
2. 審査の対象が法人か、個人か
三井住友カードは公式サイトで、個人が審査対象のカードについて「法人の信用情報が調べられることはありません」と説明しています。申し込むカードが法人を審査対象としているのか、代表者個人を審査対象としているのかは、必要書類とあわせて確認しておきたいポイントです。
3. 代表者個人の信用情報を開示して確認する
三井住友カードは「法人の信用情報だけでなく、代表者の信用情報も確認されるため、どちらも健全であることが求められます」と説明しています。この代表者個人の信用情報は、信用情報機関に開示請求することで自分で確認できます。
指定信用情報機関のCICは、情報開示の方法としてインターネットと郵送を案内しており、インターネット開示は手数料500円、サービス時間は毎日8時から21時45分、お申込み時点で有効なマイナンバーカードが必要としています。郵送開示は手数料1,500円で、申込みから1週間から10日ほどで開示報告書が発送されると案内されています(出典:CIC 情報開示とは/記事執筆時点)。
信用情報機関ごとの登録内容や保有期間の違いについては「代表者の信用情報と法人カードの審査」で詳しく整理しています。
4. 申込内容が正確かどうか
JCBは公式サイトで、申し込み内容について「虚偽申告であった場合には、審査結果に影響を及ぼす可能性も考えられます」と案内しています。実態と異なる内容を書くことは、この記事では一切おすすめしません。わからない項目は空欄のまま送らず、カード会社に確認してから入力してください。
決算書の見せ方を工夫する、実態と違う数字を申告する、といった内容は扱いません。これらは事業にとって大きなリスクになります。確認できる事実を揃えて、正確に申し込む。それ以上のことをお伝えするつもりはありません。


通らなかった場合の選択肢
デビットカード
法人向けのデビットカードは、口座残高の範囲で決済する仕組みです。与信をともなわないため、後払いにはなりません。ただし決済のたびに明細が残るため、経費の記録という点ではクレジットカードと同じように使えます。詳しくは「法人カードとデビットカードどっちがいい?違いとメリデメを比較」をご覧ください。
プリペイドカード
事前にチャージした金額の範囲で使うカードです。使いすぎを防ぎやすく、従業員に渡す用途にも向いています。「法人プリペイドカードとクレカの違いは?比較でわかるメリットと選び方」で違いを整理しています。
ビジネスローンとの違いを理解しておく
ビジネスローンは事業資金の借入であり、法人カードのような決済手段とは目的が異なります。カードは「支払いのタイミングを後ろにずらす」もの、ローンは「資金そのものを借りる」ものです。返済義務が生じ、利息が発生する点も違います。資金が足りないのか、支払いのタイミングを調整したいのかで、必要な手段は変わります。
- 法人クレジットカード:後払い。締め日・支払日に応じて支払いを繰り延べられる
- デビット/プリペイド:即時払いまたは前払い。残高の範囲で使う
- ビジネスローン:資金の借入。返済と利息が発生する
支払いのタイミングと資金の過不足を整理するには、資金繰りの考え方を扱った本も参考になります。
資金繰りに不安があるときの公的な相談先
よろず支援拠点
中小企業基盤整備機構が運営するよろず支援拠点は、公式サイトで47都道府県に設置されていることを明記し、中小企業・小規模事業者、NPO法人・一般社団法人・社会福祉法人等を対象に無料で経営上の相談に対応すると案内しています。国が設置している窓口です(出典:よろず支援拠点/記事執筆時点)。
日本政策金融公庫
日本政策金融公庫は、国民生活事業・中小企業事業・農林水産事業の3事業で融資を行っています。公式サイトでは、国民生活事業について小規模事業者への小口融資を行っており主な融資制度の限度額は7,200万円、中小企業事業について主な融資制度の上限額は7億2,000万円と案内しています(出典:日本政策金融公庫 事業資金/記事執筆時点)。事業資金相談ダイヤルも設けられています。
中小企業庁の情報
中小企業庁のサイトには、金融支援やセーフティネット保証制度、経営者保証に関する情報がまとめられています。制度は改定されることがあるため、利用を検討する際は公式サイトで最新の内容をご確認ください。

よくある質問
Q. 赤字だと法人カードは作れないのでしょうか
そうとは言えません。三井住友カードは公式サイトで、赤字決算であっても代表者の信用情報が良好であったり財務状況が健全であったりする場合は審査に通る可能性がある、と説明しています。ただし審査基準は公開されていないため、作れる・作れないを事前に判断することはできません。
Q. 決算書を提出しないカードなら赤字は関係ありませんか
決算書を提出しないカードでは、決算の内容が申し込み書類として提出されることはありません。ただしそれ以外に何が確認されるかは各社が公開していないため、「関係ない」と断定することはできません。
Q. 審査に落ちた理由を教えてもらえますか
カード会社は審査結果の理由を明らかにしないのが一般的です。なお全国銀行個人信用情報センターも、公式サイトで「審査業務は一切行っておりませんので、審査結果の理由についてはわかりません」と案内しています。落ちた後の対応は「法人カードの審査に落ちた!原因と再申込で通過するコツ」で扱っています。
Q. すぐに再申込してもよいですか
申込の記録は信用情報機関に一定期間登録されます。CICは申込情報の保有期間を「照会日より6ヶ月間」と案内しています。短期間に複数の申し込みを重ねると、その記録が残ることになります。
Q. 個人事業主で赤字の場合はどうなりますか
個人事業主向けのカードでは、代表者個人の情報が中心に確認されるものがあります。三井住友カードは、個人が審査対象のカードについて法人の信用情報が調べられることはないと説明しています。詳しくは「個人事業主でも法人カードは作れる?おすすめカードと審査のコツ」もご覧ください。
Q. 赤字を解消してから申し込んだほうがよいですか
財務状況が改善していれば申し込みの材料は変わります。ただし決算を待つ間に必要な支払いが発生する場合もありますので、デビットやプリペイドで当面の運用をつなぐという判断もありえます。事業の状況に応じて選んでください。
まとめ
赤字決算と法人カードの審査について、この記事で確認できたのは次のことです。カード会社は赤字が不利に働きうると説明している。ただし赤字だけで結論が決まるとは書かれていない。決算書の提出を求めないカードもある。それ以上の基準は公開されていないため、通る方法を提示することはできません。
できるのは、必要書類を確認し、審査の対象が法人か個人かを把握し、代表者個人の信用情報を開示して自分の目で見て、正確な内容で申し込むことです。そして通らなかった場合も、デビット・プリペイドという決済手段と、公的な相談窓口という選択肢が残っています。資金繰りそのものに不安がある場合は、カードの前によろず支援拠点や日本政策金融公庫に相談してみてください。各制度と各社の条件は変わることがあるため、最新情報は公式サイトでご確認をお願いします。

