文具、コピー用紙、椅子、モニター、ノートパソコン。オフィスで買うものは、カードで決済すれば手続きとしては数秒で終わります。ところが経理側では、同じ「買い物」でも金額によって処理がまったく変わります。全額をその年度の費用にできるものもあれば、資産に計上して数年かけて償却するものもあります。
この記事では、法人カードで消耗品や備品を買う会社が押さえておきたい金額の区切りと、期末に気をつけたい点を整理します。仕訳全般の考え方は「法人カードの経費仕訳ガイド」で扱っているため、こちらは購入時の判定にしぼります。

金額の区切りは3つある
取得価額10万円未満は少額の減価償却資産
国税庁は、少額の減価償却資産について、使用可能期間が1年未満のもの、または取得価額が10万円未満のもののいずれかに該当するものとし、法人がこれを事業の用に供した事業年度において取得価額に相当する金額を損金経理した場合には、その損金経理をした金額は損金の額に算入されるとしています(出典:国税庁 No.5403 少額の減価償却資産になるかどうかの判定の例示/令和7年4月1日現在法令等)。
20万円未満は一括償却資産という選択肢
同ページの注記には、取得価額が20万円未満の減価償却資産については、各事業年度ごとに、その全部または一部を一括したものの取得価額の合計額を3年間で償却する一括償却資産の損金算入の規定を選択できる、とされています。10万円を超えたら即座に長期の償却、というわけではないということです。
オフィスチェアのように価格帯の幅が広い備品は、購入前に取得価額がどの区切りに入るかを確認しておくと、処理を決めやすくなります。
40万円未満は中小企業者等の特例
さらに、中小企業者等については別の特例があります。国税庁は、中小企業者等が取得価額30万円未満である減価償却資産を平成18年4月1日から令和8年3月31日までの間に取得などして事業の用に供した場合には、一定の要件のもとに、その取得価額に相当する金額を損金の額に算入することができるとしています(出典:国税庁 No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例/令和7年4月1日現在法令等)。
この特例には条件があります。対象となるのは、中小企業者または農業協同組合等で青色申告書を提出するもののうち、常時使用する従業員の数が500人以下(特定法人については300人以下)の法人とされています(令和8年4月1日以後に取得等をする場合は、常時使用する従業員数が400人を超える法人が対象から除外されました)。また、適用を受ける事業年度における少額減価償却資産の取得価額の合計額が300万円を超えるときは、300万円に達するまでの合計額が限度となります。事業年度が1年に満たない場合は月数按分になる旨も示されています。
この特例には適用期限が定められています。上記の国税庁のページ(令和7年4月1日現在法令等)には令和8年3月31日までの取得等が対象と記載されていますが、令和8年度税制改正で見直されました。国税庁の改正解説によると、令和8年4月1日以後に取得等をする減価償却資産は、取得価額基準が30万円未満から40万円未満に引き上げられ、適用期限が3年延長されています(出典:国税庁 令和8年度 法人税関係法令の改正の概要(主な中小企業税制の見直し))。中小企業庁の案内では、適用期限は令和11年3月31日までとされています(出典:中小企業庁 少額減価償却資産の特例)。期限は延長されることもあれば見直されることもあるため、購入を検討する際は必ず国税庁の最新のページでご確認ください。
判定は「1単位」で行う
カードで別々に決済したかどうかは、判定に影響しません。国税庁は取得価額の判定について、通常1単位として取引されるその単位ごとに判定するとしたうえで、次の例を挙げています。
応接セットの場合は、通常テーブルと椅子が1組で取引されるものであるため、1組で10万円未満になるかどうかを判定する。カーテンの場合は、1枚で機能するものではなく、一つの部屋で数枚が組み合わされて機能するものであるため、部屋ごとにその合計額が10万円未満になるかどうかを判定する、という説明です。
決済を分ければ金額の判定が変わる、という考え方は成り立ちません。カードの明細が2行に分かれていても、1単位として取引されるものなら合計で見ることになります。

消費税の経理方式で判定額が変わる
10万円・20万円・40万円という区切りを、税込で見るのか税抜で見るのか。これは自社が採用している消費税の経理処理の方式によって決まります。国税庁のページにも、消費税等の経理処理方式の違いによる少額の減価償却資産の判定についての質疑応答へのリンクが置かれています。
税抜経理を採用している会社と税込経理を採用している会社とでは、同じ商品を買っても判定結果が変わることがあります。社内で購入の稟議基準を作るときは、どちらの金額で書いているのかを明示しておくと混乱しません。
モニターのように、税込と税抜で区切りをまたぎやすい価格帯の商品は、どちらの金額で判定するかを先に確認しておくと安心です。
消耗品は「消費した日」が原則
ここは意外と知られていない部分です。法人税基本通達2-2-15は、消耗品その他これに準ずる棚卸資産の取得に要した費用の額は、当該棚卸資産を消費した日の属する事業年度の損金の額に算入するのが原則であるとしています。
そのうえで、法人が事務用消耗品、作業用消耗品、包装材料、広告宣伝用印刷物、見本品その他これらに準ずる棚卸資産(各事業年度ごとにおおむね一定数量を取得し、かつ、経常的に消費するものに限る)の取得に要した費用の額を継続してその取得をした日の属する事業年度の損金の額に算入している場合には、これを認めるとされています(出典:国税庁 法人税基本通達 第2章第2節 販売費及び一般管理費等)。
「おおむね一定数量」「経常的に消費する」がカギ
この通達の書き方から読み取れるのは、取得時に損金にできるのは毎期おおむね同じ量を買い、実際に日常的に使い切っているものに限られるという点です。期末に普段の何倍もの量をまとめて購入した場合、この条件から外れる可能性があります。
また同通達には、この取扱いにより損金の額に算入する金額が製品の製造等のために要する費用としての性質を有する場合には、その金額は製造原価に算入する旨の注記もあります。製造業での線引きは「製造業の支払いを法人カードで扱うときの線引き」でも扱っています。
期末の在庫状況を見て購入量を決めるのは、通常の在庫管理として自然な行動です。ただし税負担を減らす目的で普段と違う量をまとめ買いするという発想は、通達の条件から外れる可能性があります。実態に沿った購入を前提に、判断に迷う場合は税理士にご相談ください。
コピー用紙のように毎月おおむね同じ量を使う事務用品は、購入のペースを一定に保っておくと、処理の考え方も揃えやすくなります。

カード明細では「何を買ったか」が分からない
ここが法人カード運用の弱点です。明細に出てくるのは加盟店名と金額だけで、購入した品目までは記録されません。判定に必要なのは金額と品目の両方なので、品名の分かる書類を回収する運用が要ります。
ネット通販とオフィス通販の使い分け
ネット通販は購入履歴が残るため、後から品目を追いやすい経路です。会社のアカウントで購入し、履歴を経理も見られる状態にしておけば、明細との突き合わせが速くなります。Amazonでの購入については「法人カードでAmazonの購入をお得にする方法」で経理面も含めて整理しています。
インボイス制度との関係
インボイス制度では、一定の事項が記載された帳簿および適格請求書等の保存が仕入税額控除の要件とされており、適格請求書は登録を受けた適格請求書発行事業者でなければ交付できないとされています(出典:国税庁 No.6498 適格請求書等保存方式(インボイス制度)/令和7年4月1日現在法令等)。カードの利用明細書は適格請求書には該当しません。実務の組み立て方は「法人カードのインボイス対応」をご覧ください。
社内で決めておくと楽になること
備品の購入は、担当者ごとにやり方がばらつきやすい領域です。次の3つを決めておくと、月末の作業が短くなります。
1つ目は、金額いくらから稟議が必要か。税務上の区切りと社内の承認基準を揃えておくと、後で判定に困りません。2つ目は、購入経路を何本に絞るか。3つ目は、資産に計上するものが出たときに誰が管理台帳へ記録するかです。
備品は数年使うものが混じるため、台帳がないとどこに何があるか分からなくなります。カードの明細を「買った記録」として使いつつ、資産の管理は別の仕組みで持つのが現実的です。明細の扱いは「法人カードの利用明細を管理する方法」で整理しています。
資産に計上した備品には管理番号のラベルを貼っておくと、台帳と現物の照合がしやすくなります。
よくある質問
Q. 9万円のパソコンを買いました。全額を経費にできますか?
取得価額が10万円未満であれば、事業の用に供した事業年度において取得価額に相当する金額を損金経理した場合、その金額は損金の額に算入されるとされています。ただし判定に使う金額は消費税の経理方式によって変わるため、自社がどちらの方式かをご確認ください。
Q. 25万円のパソコンはどうなりますか?
10万円以上のため少額の減価償却資産には当たりませんが、中小企業者等の特例の要件を満たす法人であれば、40万円未満(令和8年4月1日以後の取得等)の資産として取得価額を損金に算入できる可能性があります。年間300万円という限度額や、青色申告書の提出、従業員数の要件があるため、国税庁のページで条件をご確認ください。
Q. 一括償却資産と中小企業者等の特例は併用できますか?
国税庁のページには、この特例の適用を受ける資産は租税特別措置法上の特別償却・税額控除・圧縮記帳と重複適用はできず、また取得価額が10万円未満のものまたは一括償却資産の損金算入制度の適用を受けるものについてもこの特例の適用はない、と示されています。どれを選ぶかは資産ごとの判断になります。
Q. ソフトウェアも特例の対象になりますか?
国税庁のページには、器具および備品、機械および装置等の有形減価償却資産のほか、ソフトウエア、特許権、商標権等の無形減価償却資産も対象となる旨が記載されています。中古資産であっても対象になるとされています。
Q. カードのポイントで購入した分はどう扱いますか?
ポイントを使った場合、実際に支出した金額と表示価格が変わります。会社として貯めたポイントの扱いは整理が必要になるため、「法人カードのポイントは何に使うのがお得?」を参考にしたうえで、処理方法は税理士にご相談ください。
Q. 備品購入用にカードを分けたほうがよいですか?
購入頻度が高く、担当者が複数いる会社では分ける価値があります。誰がいつ何を買ったかが券面単位で分かるためです。ただし枠と年会費の負担が増えるため、購入件数を見てから判断してください。年会費の考え方は「法人カードの年会費は経費にできる?」で扱っています。

まとめ
消耗品と備品の購入は、カードで払えば手続きは簡単ですが、経理では金額によって扱いが分かれます。取得価額10万円未満は少額の減価償却資産、20万円未満は一括償却資産という選択肢、中小企業者等であれば40万円未満の特例(令和8年4月1日以後の取得等)。この3段階を頭に入れておくと、購入時の判断が速くなります。
判定は1単位ごとに行うため、決済を分けても結論は変わりません。消耗品については、法人税基本通達2-2-15が消費した日の属する事業年度の損金とするのを原則とし、各事業年度ごとにおおむね一定数量を取得しかつ経常的に消費するものについて、継続して取得日の属する事業年度の損金に算入している場合はこれを認めるとしています。いつもどおりの購入であることが前提です。
中小企業者等の特例には適用期限と年間300万円の限度額があります。制度は改正されることがあるため、購入の判断の前には国税庁の最新の情報をご確認いただき、個別の判断は税理士にご相談ください。


