「法人カードなら、カードには会社名が入るはずだ」と思っていた方は多いのではないでしょうか。実際に手元に届いたカードに自分の氏名がローマ字で刻まれていて、戸惑ったという声もよく聞きます。
法人カードの名義をめぐる話がややこしいのは、「契約者は誰か」「カード券面に載る名前は誰か」「引き落とし口座は誰の名義か」の3つが別々の話だからです。この3つは一致することもあれば、ずれることもあります。この記事では、その3階層を切り分けて整理していきます。
なお、法人カードと個人向けカードの機能面の違いについては法人カードと個人カードの違いを解説した記事で扱っています。ここではあくまで「名義」に絞って掘り下げます。

カード券面に載るのは、原則として個人名
まず券面の話からです。三井住友カードが公開している法人カードの名義に関する解説ページには、「法人カードの名義は、会社名ではなく申し込みを行った代表者の個人名になります」と明記されています。法人・企業の場合は会社の代表者、個人事業主の場合は事業主本人ということです。
同ページには、法人カードのなかには名義人の個人名だけでなく会社名が併記されるものもあるが、その場合もカードの名義は記載されている個人であることに変わりはない、という説明も添えられています。会社名が印字されていても、それは名義人が変わることを意味しません。
なぜ個人名になるのか
同ページでは、その理由についても説明されています。クレジットカード本体はカード会社に所有権があり、カード会社が会員本人に貸与している形をとっているため、カード会員にカードの所有権はない、という整理です。
だからこそ、名義人以外の人へ譲渡したり利用させたりすることはできません。名義人以外が利用することは、本人が承認していてもカード会社との契約違反になり、場合によっては詐欺罪に問われることもあると同ページには記載されています。
「社内の共用カード」として1枚を複数人で回して使う運用は、規約違反にあたります。三井住友カードの解説ページでも、社内で使い回しをするなどカードに記載された本人以外が利用するとカード会社の規約違反になる、と明記されています。人数分が必要なら、追加カードを発行するのが正しい手順です。
社員に持たせる場合はどうなるか
同ページによると、個人事業主や法人代表者などの契約者以外に法人カードを作成する場合は追加カードを発行する必要があり、社員それぞれの必要情報を申し込みフォームに入力し、審査に通ると利用する社員の個人名が記載された法人カードが発行されます。
つまり社員が持つカードにも、その社員本人の名前が入ります。カードの名義は「法人に属する個人名」である、という整理です。
社員が外出先で法人カードを使う場面が多い場合は、私用のカードと分けて収納できるカードケースを用意しておくと、取り違えを防ぎやすくなります。スキミング防止タイプもありますが、不正利用への備えの基本はカード会社の補償や本人認証の仕組みであり、ケースは補助として考えてください。

契約者は誰になるのか。ここがカードで分かれる
券面の名前は原則として個人名ですが、契約の当事者が法人なのか代表者個人なのかは、カードによって明確に違います。
法人が契約者になるタイプ
三井住友カードの公式ページによると、三井住友ビジネスカードの申し込み対象は「法人のみを対象(カード使用者は20名以下が目安となります)」と記載されています。大企業向けの三井住友コーポレートカードは「大企業向け(カード使用者は20名以上が目安となります)」です。いずれも会社そのものが申し込みの主体になります。
代表者個人が契約者になるタイプ
一方、三井住友カード ビジネスオーナーズの公式ページでは、申し込み対象は「満18歳以上(高校生は除く)の法人代表者、個人事業主(副業、フリーランスを含む)の方」と記載されています。
そして同カードのページには、契約関係について踏み込んだ注記があります。カード利用の契約者は代表者個人となり、代表者個人が口座引落を法人に委任する形式となること、カード会社からの請求・連絡は代表者個人あてに行い、原則として法人に対して連絡は行わないこと、という内容です。
代表者個人が契約者になるタイプでは、支払いの責任も代表者個人が負う構造になります。会社が支払うつもりでいても、契約上の当事者は代表者個人です。役員の交代や会社の状況が変わったときにどうなるかは、この構造を理解しているかどうかで対応が変わります。
引き落とし口座の名義はまた別の話
3つ目の階層が口座です。三井住友カードの解説ページには、法人カードの名義は社長・役員・社員にかかわらず「法人に属する個人名」だが、支払い口座は基本「法人名義の銀行口座」であり、カードの種類によっては「個人名義の銀行口座」も可能である、と記載されています。
実際のスペック表を並べると、カードごとの違いがはっきりします。
| カード | 申し込み対象 | 決済口座 |
|---|---|---|
| 三井住友ビジネスカード | 法人のみ | 法人名義口座 |
| 三井住友コーポレートカード(会社一括決済方式) | 大企業向け | 法人名義口座 |
| 三井住友コーポレートカード(個別決済方式) | 大企業向け | お申し込みご本人の個人名義口座 |
| 三井住友カード ビジネスオーナーズ | 法人代表者・個人事業主 | お申し込みご本人の法人名義口座・個人名義口座(屋号付含む) |
ビジネスオーナーズの欄には「個人事業主の方は、法人名義口座をご指定いただけません」という注記が付いています。三井住友ビジネスカード for Ownersの決済口座も同じ記載です。
コーポレートカードの個別決済方式という例外
三井住友コーポレートカードのスペック表を見ると、個別決済方式では「ご利用代金をカード使用者の個人名義口座へご請求いたします」となっています。会社が発行したカードなのに、支払いは使用者個人の口座から引き落とされるという形です。
JCBの会員規約(法人用)にも、これに対応する「使用者支払型法人会員特約」が置かれています。この特約は、カード利用代金の支払い口座にカード使用者名義の口座を指定する方に適用されるもので、第5条(支払方法)では債務をカード使用者の支払い口座から約定支払日に口座振替により支払うこと、その債務が支払われなかった場合は法人会員が所定の手続きに従って弁済することが定められています。
使用者が払えなければ最終的に法人が負う、という構造です。名義が分かれていても、責任の所在は規約で整理されています。

社員の口座が関わる運用では、カードの取り扱いを社内規程として文書にしておくと説明がしやすくなります。規程の作り方は解説本で一度確認しておくと安心です。
名義の違いが実務に効いてくる場面
屋号付き口座を使いたいとき
個人事業主が屋号付きの口座を引き落とし口座にしたい場合、ビジネスオーナーズの決済口座欄には「個人名義口座(屋号付含む)」と記載されており対応しています。ただし三井住友カードの入会案内ページによると、インターネット上で口座振替設定が可能な金融機関のうち、屋号付口座・法人口座については三井住友銀行のみと案内されています。他行の場合は書面での手続きになります。
口座の指定については法人カードの引き落とし口座の指定方法でも詳しく扱っています。
ポイントや特典の帰属
契約者が代表者個人になるタイプでは、カードに紐づくサービスも代表者個人に紐づく形になります。三井住友カードのビジネスオーナーズのスペック表には、同一名義で同社の個人用カードも持っている場合、インターネットサービス「Vpass」のログインIDが統合されるという記載があります。また、リボ払い・分割払いなどの利用枠は本会員が持つ個人カードと合算される旨も注記されています。
個人カードと利用枠を共有するという点は、限度額を考えるうえで見落としやすいポイントです。
公私の線引き
名義が代表者個人であっても、法人カードは事業用の決済手段です。契約者が個人だからといって私的な支出に使ってよいことにはなりません。公私を分ける具体的な方法は法人カードの個人利用と公私分離の記事で解説しています。
事業用のカードと私用のカードを財布ごと分けておくのも、支払いの際の取り違えを防ぐ方法のひとつです。カード数枚が収まる薄型の財布なら、普段の財布と一緒に持ち歩いてもかさばりません。

個人名義で持てるビジネスカードという選択肢
三井住友カードの名義に関する解説ページには、法人カードには法人のみを対象にしたカードのほかに法人代表者・個人事業主を対象にしたカードもあり、支払い方法も1回払い以外に分割払い・リボ払い・ボーナス一括払いを選択できたり、海外キャッシングサービスが利用できたりと、個人カードに近い使い方ができる、という説明があります。
設立して間もない、あるいは個人事業主として活動しているという段階であれば、こちらのタイプのほうが手続きも柔軟です。支払い方法の詳細は法人カードの分割払いに関する記事もご覧ください。
よくある質問
Q. 法人カードに会社名は印字されますか?
カードによります。三井住友カードの解説ページには、名義人の個人名だけでなく会社名が併記されるものもあると記載されています。ただしその場合もカードの名義は記載されている個人であり、名義人以外は利用できません。
Q. カードを社員に貸すことはできますか?
できません。三井住友カードの解説ページには、名義人以外が利用することは本人が承認していてもカード会社との契約違反になり、場合によっては詐欺罪に問われることもあると記載されています。社員が使う場合は追加カードの発行が必要です。
Q. 法人名義の口座を引き落とし口座にできますか?
カードによります。三井住友ビジネスカードや三井住友コーポレートカードの会社一括決済方式は法人名義口座、ビジネスオーナーズは法人名義口座と個人名義口座(屋号付含む)の両方が記載されています。ただし個人事業主は法人名義口座を指定できない旨の注記があります。
Q. 個人事業主でも法人名義のカードは作れますか?
法人格がなければ法人としての契約はできません。個人事業主の場合は事業主本人が契約者となり、券面にも本人の名前が入ります。屋号付きの口座を引き落とし口座に指定できるカードはあります。
Q. 代表者が交代したらカードはどうなりますか?
契約者が代表者個人になっているタイプでは、契約の当事者が変わることになるため手続きが必要です。取り扱いはカード会社によって異なるため、交代が決まった段階でカード会社に確認することをおすすめします。
Q. 契約者が個人なら、会社の信用は関係ないのですか?
契約者が代表者個人であっても、カード会社は事業の状況を含めて総合的に判断します。三井住友ビジネスカードのプラチナカードでは決算書の提出が求められる旨が公式ページに記載されており、カードの種類によって確認される範囲は変わります。審査の考え方は法人カードの審査基準の記事をご覧ください。
まとめ
法人カードの名義は、3つの階層に分けて理解すると混乱がなくなります。カード券面に載るのは原則として個人名で、これはカードの所有権がカード会社にあり会員本人に貸与されているという構造に由来します。契約者が法人なのか代表者個人なのかはカードによって分かれ、引き落とし口座の名義もカードごと・決済方式ごとに異なります。
この3つを混同したまま運用すると、共用カードのような規約違反や、想定外の口座から引き落とされるといった事態につながります。申し込む前に、契約者・券面・口座の3点を公式ページのスペック表で確認しておくことをおすすめします。
記載した内容は記事執筆時点で各社の公式ページおよび会員規約に掲載されていたものです。仕様は変更されることがあるため、実際の判断の前に必ず公式サイトで最新の情報をご確認ください。参考として、三井住友カードの法人カードの名義に関する解説ページもあわせて確認しておくとよいでしょう。

