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不動産業の経費と法人カードの相性|広告費の山と、預り金を混ぜない設計

業種・法人形態別の選び方

不動産業は、経費の出方が独特です。物件の売買が決まるまでは広告費と人件費が出続け、成約すると一気に入ってくる。この波の大きさが、法人カードの使い方を決めます。

さらにこの業種には、法律が経費の出るタイミングと売上の上限を規定しているという他業種にない事情があります。宅地建物取引業法です。この記事では、法の条文を確認しながら、不動産業で法人カードをどう組み込むかを整理します。

ナビ助
ナビ助
不動産業は「広告をいつ出せるか」まで法律で決まってるんだ。カードの話に入る前に、そこを押さえておこう。

売上の上限が法律で決まっている業種

報酬には上限がある

宅地建物取引業法第46条は、報酬について次のように定めています。

「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買、交換又は貸借の代理又は媒介に関して受けることのできる報酬の額は、国土交通大臣の定めるところによる。」「宅地建物取引業者は、前項の額をこえて報酬を受けてはならない。」(出典:e-Gov法令検索 宅地建物取引業法)

同条はさらに、国土交通大臣が定めた報酬の額を事務所ごとに公衆の見やすい場所に掲示しなければならないとしています。

ここから言えるのは、1件あたりの仲介で得られる収入には天井があるということです。経費が増えたぶんを単価に転嫁して吸収する、という発想が使いにくい業種だといえます。だからこそ、経費側をどれだけ正確に把握できるかが効いてきます。

ポイント

収入に上限がある以上、改善の余地は経費側にあります。法人カードの価値は「還元でいくら戻るか」よりも、「案件ごとにいくらかかったかが見えるようになること」のほうが大きいと考えると、導入の目的がはっきりします。

案件ごとの経費を把握するには、カードの明細とあわせて、物件ごとに請求書や領収書を分けて保管しておくと集計しやすくなります。

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広告費がなぜ特定の月に集中するのか

広告を開始できる時期が法律で制限されている

宅地建物取引業法第33条は、広告の開始時期の制限として次のように定めています。

「宅地建物取引業者は、宅地の造成又は建物の建築に関する工事の完了前においては、当該工事に関し必要とされる都市計画法第二十九条第一項又は第二項の許可、建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)第六条第一項の確認その他法令に基づく許可等の処分で政令で定めるものがあつた後でなければ、当該工事に係る宅地又は建物の売買その他の業務に関する広告をしてはならない。」

つまり許可等の処分が下りるまでは広告を打てません。逆にいえば、処分が下りた瞬間から広告費が一気に立ち上がる構造になっています。この立ち上がりが複数の物件で重なると、その月の広告費だけが突出します。

あわせて第32条は誇大広告等を禁止しており、所在・規模・形質・利用の制限・環境・交通の利便・対価の額などについて、著しく事実に相違する表示や、実際より著しく優良・有利であると誤認させる表示をしてはならないと定めています。広告の内容にも制約があるということです。

ナビ助
ナビ助
広告費が読めないのは、計画が下手なんじゃなくて、許可が下りるタイミングが読めないからなんだよね。構造の問題なんだ。

枠は「平均の月」ではなく「重なった月」で見る

広告費をカードに乗せるなら、利用可能枠は平均的な月の広告費ではなく、複数物件の広告が重なった月を基準に見積もる必要があります。ここを平均で見積もると、いちばん動きたい月に決済が止まります。

なお、同じ「広告費をカードで払う」という話でも、運用型広告を主戦場とするIT企業とは事情が違います。IT企業の場合は月額が月末まで確定しないという時間の問題ですが、不動産業の場合は許可等の処分という外部要因でタイミングが決まります。IT企業側の論点は「IT企業に合う法人カードの選び方|広告費とSaaS費用を1枚にまとめる考え方」で扱っています。枠の見積もり方は「限度額が高い法人カードが必要な場面とは」をご覧ください。

預り金を会社の資金と混ぜない

手付金等には保全措置が求められる

宅地建物取引業法第41条は、手付金等の保全について定めています。工事の完了前に自ら売主として売買を行う場合、銀行等との保証委託契約や保険事業者との保証保険契約といった措置を講じた後でなければ、買主から手付金等を受領してはならないという内容です。同条には、買主への所有権移転の登記がされたときなど、一定の場合を除く旨の但書きも置かれています。

この条文が直接カードの話をしているわけではありません。ただし実務上の含意ははっきりしています。預かったお金と、会社が自由に使える運転資金は別のものだということです。

注意

法人カードの引き落とし口座を、預り金が入る口座と同じにしないでください。カードの引き落としは月に一度まとまった金額が自動で出ていくため、口座を共有していると残高の内訳が見えなくなります。口座の指定方法は「法人カードの引き落とし口座はどう指定する|法人口座・屋号付き口座の設定方法」で扱っています。

カードに乗る経費と乗らない経費

登記に関わる税金はカードに乗らないことが多い

買取再販などで自ら物件を取得する場合、登録免許税が発生します。登録免許税は国税として税額表が定められており、たとえば不動産の登記については課税標準と税率が個別に決められています(参考:国税庁 No.7191 登録免許税の税額表/令和8年4月1日現在法令等)。

また国税庁は、国・地方公共団体等が法令に基づいて行う登記、登録、特許、免許、許可、検査、検定、試験、証明、公文書の交付などの事務に係る役務の提供で、法令に基づいて徴収される手数料は消費税の非課税取引にあたるとしています。あわせて、印紙の売渡し場所における印紙の譲渡も非課税と示されています(出典:国税庁 No.6201 非課税となる取引/令和7年4月1日現在法令等)。

不動産の取引では、登記や証明書の取得といった非課税の支出と、広告や印刷といった課税仕入れになる支出が、同じ案件の中に並んで発生します。これらを1枚のカードの明細でまとめて見ると、消費税の集計の段階で仕分け直す作業が生まれます。案件の記録を残す時点で、どちらに属する支出なのかを書き分けておくと後が楽です。

つまり物件取得まわりの支出には、そもそもカード決済という土俵に乗らないものや、消費税の扱いが他と異なるものが混ざります。カードに集約できるのは、あくまで課税仕入れになる経費の部分だと整理しておくと混乱しません。

課税と非課税が混在する不動産取引の仕訳に慣れていない場合は、不動産業向けの経理の本で全体像を押さえておくと、税理士とのやり取りも進めやすくなります。

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ナビ助
ナビ助
同じ案件の中に、課税と非課税がまざって出てくるんだよね。カードにぜんぶ乗せれば楽、とはならないのが不動産業なんだ。

カードに乗せやすい経費

一方で、広告掲載料、ポータルサイトの利用料、印刷物の制作費、内見の際の交通費、現地看板やのぼりの制作費、事務所の通信費や備品といった支出はカードに乗せやすい領域です。案件ごとに追加カードを分けるか、会計ソフト側で物件のタグを付けるかで、案件別の集計もできるようになります。会計ソフトとの連携は「法人カードと会計ソフトの連携ガイド|経理を自動化する方法」をご覧ください。

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不動産業が確認しておきたい項目

確認したい6項目
  • 複数物件の広告が重なった月の広告費はいくらか
  • その金額に対して利用可能枠が足りるか
  • カードの引き落とし口座が、預り金の入る口座と分かれているか
  • 物件ごとに経費を集計する手段があるか
  • 登録免許税や印紙など、カードに乗らない支出をどう管理するか
  • 広告媒体・ポータルサイトがカード決済に対応しているか

法令の内容は改正されることがあり、カードの条件も改定されます。記事執筆時点の情報として参考にしていただき、実際の判断にあたっては最新の法令および各カード会社の公式サイトをご確認ください。個別の取扱いについては、顧問の専門家にご相談ください。

よくある質問

Q. 広告費をすべて法人カードにまとめられますか

媒体がカード決済に対応しているかによります。ポータルサイトや広告代理店との取引が請求書払いになっている場合は、そのまま振込を続けるほうが手間が少ないこともあります。まずは媒体ごとの決済手段を一覧にしてから判断してください。

Q. 物件ごとに経費を分けて集計できますか

カードの明細だけでは物件別の区分はできません。物件ごとに追加カードを分ける、会計ソフト側でタグを付けるといった運用でカバーするのが一般的です。案件数が多い場合は、後者のほうが現実的でしょう。

Q. 手付金の受け取りにカードは使えますか

買主からの手付金等の受領は、法人カードで自社の経費を支払う話とはまったく別の論点です。宅地建物取引業法には手付金等の保全に関する定めがあり、受領の可否や方法は法令と契約の内容によります。判断は必ず専門家にご確認ください。

Q. 開業したばかりの不動産会社でも法人カードは作れますか

審査基準は各社が公開していないため、断定はできません。ただし決算書や登記簿謄本の提出が不要と案内しているカードもあります。設立直後の申し込みについては「設立直後でも作れる法人カード|起業初期に選ぶべきカードの条件」をご覧ください。

Q. 宅地建物取引業の免許を持っていないと申し込めませんか

カードの申込条件に宅建業免許の有無が含まれているという公式の記載は、今回確認した範囲では見当たりませんでした。カードの審査と宅建業の免許はまったく別の制度です。申込条件はカード会社ごとに異なるため、気になる場合は申し込み先に直接ご確認ください。

Q. 成約が偏る月と、広告費が出る月がずれるのですが

これは不動産業ではよくある状態です。カードを使うと支払いを締め日と支払日のサイクルに乗せられるため、口座から実際にお金が出るタイミングを後ろにずらせます。ただし支払日には必ず引き落とされるので、成約の入金予定と支払日の関係は月ごとに確認してください。

ナビ助
ナビ助
預かってるお金と、会社のお金。口座を分けておくだけで、あとの説明がぜんぜん楽になるよ。ここはケチらないほうがいいね。

まとめ

不動産業で法人カードを考えるときの出発点は、還元率ではなく法令が作る経費の形です。報酬には国土交通大臣が定める上限があり、広告は許可等の処分が下りるまで開始できません。この2つが、売上に天井があり、経費が特定の月に山を作るという業種の性格を決めています。

だからカードに求めるのは、山ができた月にも決済が通る枠と、案件ごとに経費が見える明細です。そして預り金の入る口座と引き落とし口座は分けておく。登録免許税や印紙のようにカードに乗らない支出があることも含めて設計すれば、導入後に慌てずに済みます。条件は変わることがあるため、最終判断の前には公式サイトと最新の法令をご確認ください。

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