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士業事務所と法人カード|実費の立替と報酬を分けるための決済の組み立て方

業種・法人形態別の選び方

士業の事務所が法人カードを検討するとき、他の業種とはっきり違う点があります。それは依頼者のために支払うお金と、自分の報酬になるお金が、同じ案件の中に混ざって流れることです。

印紙代、登録免許税、証明書の交付手数料、現地に行くための交通費。これらは事務所が立て替えますが、事務所の売上ではありません。ところが法人カードで払うと、明細上は他の経費と並んで「事務所の支出」として記録されます。この区分をどう作るかが、士業事務所のカード運用の中心テーマになります。

ナビ助
ナビ助
士業の事務所って、預かって、立て替えて、請求してっていうお金の流れがあるんだよね。ここをカードでどう扱うかが本題だよ。

報酬と実費を分けることには、法令上の意味がある

源泉徴収の対象になるかどうかが変わる

士業の報酬は、支払う側が源泉徴収をする仕組みになっています。国税庁は司法書士等に支払う報酬・料金について、次のように示しています。

「司法書士等に支払う金銭等であっても、支払者が国等に対し登記、申請等をするため本来納付すべきものとされる登録免許税、支払手数料等に充てるものとして支払われたことが明らかなものについては、源泉徴収をする必要はありません。」(出典:国税庁 No.2801 司法書士等に支払う報酬・料金/令和7年4月1日現在法令等)

弁護士や税理士等に支払う報酬・料金についても、国税庁は同様に「支払者が国等に対し登記、申請をするため本来納付すべきものとされる登録免許税、手数料等に充てるものとして支払われたことが明らかなものについては、源泉徴収をする必要はありません」としています(出典:国税庁 No.2798 弁護士や税理士等に支払う報酬・料金/令和7年4月1日現在法令等)。

ここで重要なのが「明らかなものについては」という条件です。請求書の上で報酬と実費が区分されていなければ、実費に相当する部分も含めて源泉徴収の対象になり得るということになります。

ポイント

士業事務所にとって、報酬と実費の区分は「経理の整理のため」ではなく依頼者側の源泉徴収の計算に直結する情報です。請求書のフォーマットに、報酬欄と実費欄を最初から分けて用意しておくのが確実です。

源泉徴収の計算も含めて請求書の作り方を一度整理しておきたい場合は、源泉徴収の実務をまとめた本を参考にする方法もあります。

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消費税の扱いも別

国税庁は、報酬・料金の額の中に消費税等の額が含まれている場合について、原則として消費税等の額を含めた金額を源泉徴収の対象とするが、「請求書等において、報酬・料金の額と消費税等の額が明確に区分されている場合には、その報酬・料金の額のみを源泉徴収の対象とする金額として差し支えありません」としています。同ページには、インボイス制度開始後もこの取扱いは変更ないとの注記も付いています。

加えて、そもそも立て替える実費の側にも消費税の論点があります。国税庁は、国・地方公共団体等が法令に基づいて行う登記、登録、特許、免許、許可、検査、検定、試験、証明、公文書の交付などの事務に係る役務の提供で、法令に基づいて徴収される手数料は非課税取引にあたるとし、あわせて印紙の売渡し場所における印紙の譲渡も非課税と示しています(出典:国税庁 No.6201 非課税となる取引/令和7年4月1日現在法令等)。

ナビ助
ナビ助
報酬は課税で源泉あり、法定手数料や印紙は非課税で源泉なし。同じ請求書に、性質の違うものが同居してるんだ。

カードに乗る実費と、乗らない実費

納付方法が決まっているものは乗らない

登録免許税は国税で、税額表が定められています(参考:国税庁 No.7191 登録免許税の税額表/令和8年4月1日現在法令等)。印紙税も同様に、課税文書に該当するかどうかで課税関係が決まる仕組みになっています。

こうした税や、法令に基づく手数料は、納付の方法が制度として定められています。事務所の裁量でカード払いに切り替えられる性質のものではありません。納付方法は手続きの種類や窓口によって異なるため、各官公署の案内をご確認ください。

カードに乗せやすい実費

一方で、依頼者のために出張した際の交通費や宿泊費、資料の郵送費、書籍や判例データベースの利用料、コピー代といった支出はカードに乗せやすい領域です。ここは事務所の経費としても、案件の実費としても発生し得るため、どちらに振るかを支払った時点で決めておく必要があります。

注意

カードの利用明細には「いつ・どこで・いくら」しか残りません。どの案件のための支出だったかは、明細のどこにも書かれていません。案件番号や依頼者名と紐づける台帳を別に持たないと、月末に請求書を作る段階で思い出せなくなります。明細の扱いは「法人カードの利用明細を管理する方法」もご覧ください。

台帳とあわせて、立て替えた実費の領収書を依頼者ごとのファイルに分けて保管しておくと、請求書を作る段階で探す手間を減らせます。

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事務所としての決済の組み立て方

立替専用のカードを1枚分ける

もっとも単純な解決策は、事務所の運営経費と依頼者の実費立替でカードを物理的に分けることです。事務所の家賃や通信費は1枚目、案件の実費は2枚目、というように分ければ、明細がそのまま区分の役割を果たします。2枚持ちの設計は「法人カードの2枚持ちで組む組み合わせパターン」で整理しています。

補助職員に持たせるなら追加カードで

登記の申請や書類の受け取りで、補助職員が外に出る事務所は多いでしょう。所長のカードを渡して使わせるのは会員規約上認められません。職員名義の追加カードを発行するのが正しい手順です。規約上の考え方は「法人カードの会員規約はどこを読むか」、配布時のルールは「社員に法人カードを持たせるメリットと管理ルールの作り方」をご覧ください。

申請書類を持って官公署を回る機会が多い場合は、書類を折らずに持ち運べるA4対応のビジネスバッグがあると便利です。

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個人事務所なら公私の線引きを先に決める

個人で開業している場合、事務所の支出と生活の支出が同じ口座から出ていることがあります。カードを分けるだけで、この線引きはかなり整理できます。個人事業主としての選び方は「個人事業主向け法人カードの選び方|経費管理を楽にする1枚の見つけ方」で扱っています。

ナビ助
ナビ助
カードを1枚増やすだけで、区分の手間がまるごと減ることがあるんだ。年会費無料のカードなら、試してみる価値は十分あるよ。

士業事務所が確認しておきたい項目

確認したい6項目
  • 請求書の様式で、報酬と実費が分けて記載できるようになっているか
  • 立て替えた実費のうち、非課税のものと課税のものを区別できているか
  • 案件番号とカードの利用明細を紐づける台帳があるか
  • 事務所経費用と立替用でカードを分けられるか
  • 補助職員に持たせるカードが本人名義になっているか
  • 立替が集中する月でも利用可能枠が足りるか

税制や手続きの取扱いは改正されることがあり、カードの条件も改定されます。記事執筆時点の情報として参考にしていただき、実際の処理にあたっては最新の国税庁の情報および各官公署の案内をご確認ください。個別の判断については、顧問の専門家にご相談ください。

よくある質問

Q. 立て替えた実費をカードで払うと、事務所の経費になってしまいますか

会計上どう処理するかは、立替金として扱うか一度費用に計上して後で相殺するかなど、事務所の方針によります。カードで払ったこと自体が処理を決めるわけではありません。処理方法は顧問税理士にご確認ください。仕訳の一般的な考え方は「法人カードの経費仕訳ガイド|勘定科目の使い分けを解説」でも扱っています。

Q. 依頼者に実費を請求するとき、カードの利用明細を証憑にできますか

利用明細は支払いの事実を示す記録ですが、取引の内容を証明する書類としては情報が不足します。領収書や請求書を別に保存しておくのが確実です。インボイス制度への対応も含めた考え方は「法人カードのインボイス対応|利用明細だけでは足りない理由とおすすめの実務手順」をご覧ください。

Q. 司法書士の報酬は、いくら源泉徴収されますか

国税庁は司法書士等について、源泉徴収すべき所得税および復興特別所得税の額は、同一人に対し1回に支払われる金額から10,000円を差し引いた残額に10.21パーセントの税率を乗じて算出すると示しています。同ページには、1件の委託契約で50,000円を支払う場合、(5万円 − 1万円)× 10.21% = 4,084円となる例が掲載されています。

Q. 報酬と実費を分けずに請求すると、どうなりますか

国税庁の記載は、登録免許税や手数料等に充てるものとして支払われたことが「明らかなもの」について源泉徴収が不要としています。区分が明らかでない場合の取扱いは個別の事情によりますので、請求書の記載方法については顧問税理士にご確認ください。区分を分けて書いておくことにデメリットはありません。

Q. 開業したばかりの事務所でも法人カードは作れますか

審査基準は各社が公開していないため、断定はできません。ただし個人事業主を申し込み対象に含め、決算書や登記簿謄本の提出を不要としているカードもあります。詳しくは「設立直後でも作れる法人カード|起業初期に選ぶべきカードの条件」をご覧ください。

Q. 実費の立替が重なって、カードの枠が足りなくなりそうです

立替は入金より先に出ていくため、案件が重なると枠を圧迫します。支払日前の繰り上げ入金、支払日の異なるカードの併用、大口の実費だけ依頼者からの預り金で対応するといった手段を、あらかじめ決めておくと現場が止まりません。枠の考え方は「限度額が高い法人カードが必要な場面とは」で整理しています。

ナビ助
ナビ助
立替は「先に出て、あとから戻る」お金。案件が重なる月ほど、枠のことを思い出しておこうね。

まとめ

士業事務所の法人カード選びは、還元率よりも区分のしやすさで決まります。国税庁は、登録免許税や手数料等に充てるものとして支払われたことが明らかなものについては源泉徴収が不要としています。この「明らかなもの」を作るのが、請求書の書き方と支出の記録です。

そして納付方法が制度で決まっている税や手数料は、そもそもカードに乗りません。乗るのは交通費・郵送費・資料代といった課税仕入れの部分です。事務所経費用と立替用でカードを分け、案件と紐づく台帳を1つ持つ。この2つだけで、月末の請求書作成はかなり楽になります。取扱いは改正されることがあるため、最終判断の前には国税庁の最新の情報をご確認ください。

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