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飲食店の仕入れに法人カードを使う前に|決済できる仕入先とインボイスの確認事項

業種・法人形態別の選び方

飲食店の経営で法人カードの話になると、たいてい「仕入れをカードにすれば資金繰りが楽になる」という文脈で語られます。これは方向としては正しいのですが、飲食業には他の業種にはない事情がいくつかあって、そこを飛ばして申し込むと思ったほど仕入れをカードに乗せられないということが起きます。

この記事では、飲食店が法人カードを導入する前に確認しておきたいことを、仕入れという切り口から整理します。カードの比較そのものより手前の、自店の仕入れがカードに乗るのかどうかという部分に絞って解説していきます。

ナビ助
ナビ助
カードを作ってから「うちの仕入先、現金しか無理でした」って気づくパターンが一番もったいないんだよね。順番を逆にしよう。

飲食店の資金繰りは「入金は日々、支払いはまとめて」が基本形

売上は毎日入るのに、仕入れも毎日発生する

飲食業は現金商売と言われるとおり、売上の入金サイクルが早い業種です。ただし仕入れも同じくらい高い頻度で発生します。生鮮品は使う分だけ日々仕入れることが多く、まとめ買いができません。この「毎日出ていく」構造が、飲食店の資金繰りを難しくしています。

ここで法人カードを使うと、支払いのタイミングを締め日と支払日のサイクルに乗せられます。仕入れた日から実際に口座からお金が出るまでに、一定の猶予が生まれるわけです。猶予の長さはカード会社の締め日と支払日の組み合わせで変わるので、申し込む前に自店の資金繰りと合うかを確認しておくとよいでしょう。

キャッシュレス比率が上がると、入金は逆に遅くなる

もうひとつ見落としやすいのが、売上側の変化です。店舗のキャッシュレス決済比率が上がると、売上の入金は決済代行会社の入金サイクルに従うようになり、その日のうちに現金が手元に入る割合は下がります。

ポイント

売上側の入金が遅くなっているなら、仕入れ側の支払いも後ろにずらさないと資金繰りが締まります。売上の入金サイクルと、カードの支払日をセットで設計するのが飲食店特有の考え方です。

飲食店の資金繰りや原価管理の考え方を体系的に押さえておきたい方は、飲食店経営の解説本も参考になります。

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その仕入先、カードが使えますか

飲食業の仕入先はカード非対応が残っている

ここが飲食店にとって最大のハードルです。カードを作っても、仕入先が対応していなければ意味がありません。実務上、決済手段が分かれやすいのは次のような取引先です。

決済手段を確認したい仕入先
  • 卸売市場の仲卸・産地直送の生産者(現金または掛けが中心の場合がある)
  • 業務用食材の卸・酒販店(掛け取引と口座振替が中心の場合がある)
  • 業務用スーパー・量販店(店舗により法人カードの取扱いが異なる)
  • 食材のネット卸・ECサイト(カード決済に対応しているものが多い)
  • おしぼり・リネン・清掃などのサービス(口座振替が中心の場合がある)

掛け取引の場合、そもそも支払いが翌月以降になるため、カードで支払サイトを延ばす効果は小さくなります。一方でネット卸やECはカード決済が前提のことが多く、ここは素直にカードに乗せられます。

注意

同じチェーンの業務用スーパーでも、店舗や法人契約の有無で決済条件が違うことがあります。「使えるはず」で運用を組まず、必ず取引先ごとに直接ご確認ください。

まず「仕入先ごとの決済手段の一覧」を作る

おすすめの進め方は、カードを選ぶ前に一覧を作ることです。仕入先名、月間の取引額、現在の決済手段、カードの可否。この4項目を書き出すと、カードに乗せられる金額の合計がはっきりします。この金額が、必要な利用可能枠の目安になります。

ナビ助
ナビ助
この一覧、作るのは1時間くらいなんだけど効果は大きいよ。カード決済に乗る金額が見えると、年会費をかける価値があるかも判断できるからね。

インボイス制度と軽減税率で、飲食店は証憑の管理が重くなる

カードの利用明細だけで済ませない

令和5年10月1日から、消費税の仕入税額控除の方式として適格請求書等保存方式(インボイス制度)が開始されています。仕入税額控除を受けるには、原則として適格請求書などの保存が要件となります(出典:国税庁 消費税の軽減税率制度・適格請求書等保存方式(インボイス制度))。

カードの利用明細は、いつ・どこで・いくら使ったかを示す記録としては便利ですが、それ単体で適格請求書の要件を満たすとは限りません。仕入先が発行した請求書や領収書は、これまでどおり受け取って保存する運用を続けてください。

仕入先から受け取った請求書や領収書は、月ごと・仕入先ごとに分けて保管できるファイルを用意しておくと整理しやすくなります。

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軽減税率で税率が分かれる

消費税の軽減税率制度は令和元年10月1日から実施されています(出典:国税庁「消費税の軽減税率制度」)。飲食店は仕入れる品目や取引の形態によって適用される税率が分かれるため、区分経理が欠かせない業種です。どの取引がどちらに該当するかは、国税庁が公開しているQ&Aや経理・申告ガイドで確認できます。

判断に迷う場合は、国税庁のインボイスコールセンター(0120-205-553/受付時間 9時から17時、土日祝日および年末年始を除く)でも相談を受け付けています。制度の詳細やQ&Aは「国税庁 インボイス制度特設サイト」にまとめられています。

カード明細と会計ソフトの連携は「補助」として使う

会計ソフトとカードを連携すると明細の取り込みが自動化されますが、税率区分やインボイスの有無まで自動で確定するわけではありません。連携は入力の手間を減らすものと考え、証憑の確認は残す前提で運用を組むのが安全です。連携の設定については「法人カードと会計ソフトの連携ガイド|経理を自動化する方法」で扱っています。

複数店舗を運営している場合の考え方

店長ごとにカードを持たせるか、本部で一括にするか

店舗数が増えると、追加の食材や消耗品を現場で買う場面がどうしても出てきます。ここを店長の立替にすると精算の手間が増え、本部の一括購買にすると現場のスピードが落ちます。

折衷案としてよく採られるのが、店長に追加カードを渡し、1回あたりの利用上限と使途を決めておく方法です。カードの管理ルールについては「社員に法人カードを持たせるメリットと管理ルールの作り方」もあわせてご覧ください。

店舗ごとに明細を分けられると集計が楽になる

追加カードを店舗単位で発行しておくと、明細が店舗別に分かれます。店舗別の原価率を出したいときに、集計の手間がかなり変わります。追加カードの発行枚数と年会費はカードによって条件が違うため、店舗数が増える見込みがあるなら先に確認しておくとよいでしょう。

店舗別の明細から原価率を計算するときは、桁数の多い経理向けの電卓があると集計の確認がスムーズです。

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飲食店が法人カードを選ぶときの確認事項

チェックリスト
  • カードに乗せられる仕入先の合計金額に対して、利用可能枠が足りているか
  • 締め日・支払日が自店の資金繰りに合っているか
  • 追加カードの発行枚数と年会費(店舗数ぶん出せるか)
  • 会計ソフトとの連携に対応しているか
  • 年会費に対して、想定される還元が見合うか

参考として、公式サイトに掲載されているスペックの例を挙げます。三井住友カード ビジネスオーナーズは、年会費が本会員・パートナー会員ともに永年無料、パートナーカードは18枚まで、登記簿謄本・決算書の提出が不要と案内されています。お申し込み対象は満18歳以上(高校生は除く)の法人代表者、個人事業主(副業、フリーランスを含む)の方です(三井住友カード公式サイト/同ページ内に2026年5月26日時点との注記あり)。

年会費・還元率・利用可能枠・付帯保険は改定されることがあります。記事執筆時点の情報として参考にしていただき、申し込み前にはぜひ公式サイトで最新の条件をご確認ください。

ナビ助
ナビ助
飲食は原価率との戦いだから、還元率0.5%の差でも年間で見ると効いてくるよ。ただしそれは、実際にカードで払えている金額に対しての話だからね。

よくある質問

Q. 個人経営の飲食店でも法人カードは作れますか

個人事業主を申し込み対象に含めているカードがあります。たとえば三井住友カード ビジネスオーナーズは、公式サイトでお申し込み対象を「満18歳以上(高校生は除く)の法人代表者、個人事業主(副業、フリーランスを含む)の方」と案内しています。詳しくは「個人事業主でも法人カードは作れる?おすすめカードと審査のコツ」をご覧ください。

Q. 開店前でもカードは作れますか

カードによって申込条件が異なります。事業の実態をどう確認するかも各社で違うため、一律には言えません。開業前後の申し込みについては「設立直後でも作れる法人カード|起業初期に選ぶべきカードの条件」で整理しています。

Q. 仕入れの支払いをカードにすると、支払いはどのくらい先になりますか

カード会社の締め日と支払日によります。締め日の直後に使った分がもっとも猶予が長く、締め日の直前に使った分は短くなります。自店の仕入れが月内のどこに集中しているかで、実際の効果は変わります。

Q. カードの利用明細は領収書の代わりになりますか

利用明細は取引の記録にはなりますが、インボイス制度のもとで仕入税額控除を受けるための要件は別に定められています。仕入先から受け取る請求書・領収書の保存は続けてください。取扱いの詳細は国税庁のサイトで確認できます。

Q. アルバイトにカードを持たせても大丈夫ですか

カードの追加カードは、原則としてカード会社が定める対象者に対して発行されます。誰に発行できるかは各社の規定によるため、事前の確認が必要です。仮に発行できる場合でも、使途と上限を決めたうえで運用ルールを文書にしておくことをおすすめします。

Q. 電気・ガスなどの固定費もカードにまとめられますか

事業者向けの契約でカード払いに対応しているものがあります。対応状況は契約している事業者によって異なるため、各社にご確認ください。固定費をカードに寄せると支払日が揃うため、資金繰りの見通しは立てやすくなります。ただし利用可能枠は仕入れと共有になるので、枠の配分には注意してください。

ナビ助
ナビ助
固定費をまとめるのは効果が大きいけど、枠は仕入れと取り合いになるからね。両方乗せるつもりなら枠は多めに見ておこう。

まとめ

飲食店の法人カード導入は、カードを比べるところから始めるとうまくいきません。先に仕入先ごとの決済手段を棚卸しして、カードに乗る金額を確定させる。この順番にするだけで、必要な利用可能枠も、年会費をかける価値があるかどうかも見えてきます。

そのうえで、インボイス制度と軽減税率への対応はカードを入れても軽くならないという点を押さえておいてください。証憑の保存と区分経理は引き続き必要です。カードはあくまで支払いのタイミングと明細の集約を助ける道具として、資金繰りの設計に組み込んでいくのがよいでしょう。制度や条件は変わることがあるため、最新情報は国税庁や各カード会社の公式サイトでご確認ください。

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