朝、銀行アプリを開いたら残高が思ったより少ない。カード会社から不在着信が入っている。法人カードの引き落としができなかったと気づく瞬間は、だいたいこんな形でやってきます。
入金が数日ずれた、大口の仕入れが重なった、決済口座を分けていたのを忘れていた。事業をしていれば、資金の出入りが読みどおりにいかない月はどうしても出てきます。大事なのは、そこで固まらずに順番どおり動くことです。この記事では、引き落としができなかったと分かった時点から何をするか、そして何が記録されるのかを、公式に公表されている情報にもとづいて整理します。

まず押さえたい支払日と締切日の仕組み
そもそも「いつの利用分が、いつ引き落とされるのか」を把握していないと、資金の準備がずれます。三井住友カードの法人会員規約では、支払期日について次のように定められています。
「当社に支払うべき債務の支払期日は、毎月10日若しくは毎月26日のいずれかを会員が指定するものとします。支払期日が毎月10日の場合は、締切日を毎月15日とし、支払期日が毎月26日の場合は、締切日を毎月末日とします。(中略)なお、支払期日の当日が金融機関休業日の場合は翌営業日となります。」(出典:三井住友VISAカード法人会員規約(ビジネスパーチェシング用)第9条/2026年3月改定)
同じ条文では、支払期日が毎月10日の場合、会社や金融機関の都合で毎月6日または8日となることがあり、その場合は別途通知するとも書かれています。「うちは10日引き落とし」と思い込んでいたら実際は8日だった、というずれは実際に起こり得ます。締め日と支払日は、自社のカードの規約と通知で確認しておいてください。
締切日と支払期日はカード会社ごとに違います。複数枚を運用している会社ほど、カードごとの締め日・支払日を一覧にして資金繰り表に貼っておくと事故が減ります。引き落とし口座の設定は「法人カードの引き落とし口座はどう指定する|法人口座・屋号付き口座の設定方法」で解説しています。
資金繰り表をまだ作っていない場合は、作り方を一冊で押さえておくと、カードの支払日を組み込んだ表を無理なく整えられます。
引き落としができなかったとき、何が起きるのか
カードが使えない状態になる
三井住友カードは、支払日に引き落としができなかった場合について「お支払い日に引き落としができなかった場合、カードは利用できなくなります。状況を確認のうえ、お支払いを行うことでカード利用を再開できます」と案内しています(出典:三井住友カード お支払い日に引き落としができなかった場合は)。
つまり、放っておくと社員のカードも含めて止まります。取引先との会食やサブスクの自動更新に影響が出るため、社内共有の優先度は高めに考えたほうがよい場面です。
再引き落としがある場合とない場合がある
ここは会社によっても、契約している金融機関によっても違います。三井住友カードの前掲ページでは、毎月の支払日が6日・8日の方について「すべての金融機関」で「弊社の指定する口座へお振込みが必要です」とし、振込先は登録の住所あてに葉書で案内するとしています。そしてカード利用再開予定日は「振込日の3営業日後」と示されています。
一方、支払日が10日・26日の方については、登録している金融機関ごとに手続き方法が案内される形になっています。同じカード会社でも、支払日と金融機関の組み合わせで対応が変わるということです。
規約側でも、口座振替ができない場合には「当社は、当該金融機関との約定により、支払期日以降の任意の日において、会員が当社に対して支払うべき債務の一部又は全部につき口座振替、引落し又は自動払込みができるものとします」と定められています(前掲規約第9条第3項)。再振替の有無や日程は約定次第なので、待つのではなくカード会社の案内に沿って自分から動くほうが早いのが実情です。
再振替等にかかる費用
同規約の第9条第4項・第5項では、支払期日以降の口座振替などにかかる費用(再振替等にかかる費用)を会員が負担し、その額は会社が別途定めるとされています。金額は規約本文には示されていないため、実際にいくらかかるかはカード会社への確認が必要です。

遅延損害金はどう計算されるのか
支払いが遅れた期間には、遅延損害金がかかります。三井住友カードの法人会員規約では次のように定められています。
「会員及びカード担当者並びに使用者は、当社に対する支払い(付利単位1,000円)を遅滞した場合は支払い期日の翌日から支払の日まで、また期限の利益を喪失した場合はその残債務元金(付利単位1,000円)に対し期限の利益喪失の日の翌日から完済の日まで、年14.6%を乗じ年365日(閏年は年366日)で日割り計算した額の遅延損害金を支払うものとします。」(前掲規約第16条)
この年14.6%という数字は三井住友カードの法人会員規約(ビジネスパーチェシング用)に書かれているもので、遅延損害金の率はカード会社や商品ごとに異なります。自社のカードについては、手元の会員規約か発行会社の公式サイトでご確認ください。
同じ規約の第15条では、支払うべき債務の履行を遅滞した場合などに期限の利益を失うという定めが置かれています。期限の利益を失うと、分割やリボの残債も含めて一括で支払う義務が生じ得ます。遅れが長引きそうなときほど、早めにカード会社へ連絡する意味が大きくなります。
信用情報には何が記録されるのか
ここは不安になりやすいところなので、各機関が公表している内容そのものを見ていきます。日本には指定信用情報機関が複数あり、登録される項目も保有期間も機関ごとに違います。
CIC(株式会社シー・アイ・シー)
CICは、加盟するクレジット会社等から登録される情報を「申込情報」「クレジット情報」「利用記録」の3つで構成しているとし、それぞれの保有期間を次のように公表しています。申込情報は「照会日から6ヶ月間」、クレジット情報は「契約期間中および契約終了後5年以内」、利用記録は「利用日から6ヶ月間」です。クレジット情報の情報項目には「返済状況に関する情報」として、報告日・残高・請求額・入金額・入金状況、異動(延滞・保証履行・破産)の有無、異動発生日、異動解消日、終了状況等が挙げられています(出典:CIC CICが保有する信用情報)。
JICC(株式会社日本信用情報機構)
JICCは「信用情報の内容と登録期間」を公表しており、契約日が2019年10月1日以降のものについて、契約内容に関する情報・返済状況に関する情報のいずれも「契約継続中及び契約終了後5年以内」としています。申込みに関する情報は「照会日から6か月以内」です。
法人カードを扱ううえで押さえておきたいのは、JICCには個人とは別に「法人情報の登録内容と登録期間」が定められている点です。法人名・代表者名・所在地・電話番号等の情報、契約内容に関する情報、返済状況に関する情報が登録対象とされ、契約内容と返済状況は「契約継続中及び完済日から5年以内」とされています(出典:JICC 信用情報の内容と登録期間)。
全国銀行個人信用情報センター(KSC)
全国銀行協会が設置・運営する全国銀行個人信用情報センターは、取引情報について「契約期間中および契約終了日(完済されていない場合は完済日)から5年を超えない期間」としています。照会記録情報は当該利用日から本人開示の対象が1年を超えない期間、会員への提供は6か月を超えない期間です。また官報情報として、官報に公告された破産・民事再生手続開始決定を「当該決定日から7年を超えない期間」登録するとしています(出典:全国銀行個人信用情報センター センターの概要)。
このように、同じ「5年」でも起算点の表現が機関ごとに違い、KSCだけは官報情報に7年という枠があるという状態です。「延滞するとこうなる」と一律に語られがちですが、実際には機関ごとの定めを見るのが正確です。3機関の位置づけと開示の手順は「代表者の信用情報と法人カードの審査|3つの信用情報機関の中身と開示の手順」で詳しく扱っています。

支払いが厳しいときの相談先
まずはカード会社へ
入金の見込みが立たない、今月は一部しか払えない。そういう状況こそ、先に連絡しておく意味があります。事情を伝えたうえで支払方法を相談できるかどうかは会社によって異なりますが、連絡がないまま滞る場合と比べて話が進めやすくなるのは確かです。
よろず支援拠点
資金繰りそのものを立て直したいときは、公的な相談先があります。よろず支援拠点は中小企業基盤整備機構が運営する窓口で、公式サイトでは「よろず支援拠点は国が設置しています」「経営上のあらゆるご相談に何度でも無料で対応します」と案内されています(出典:中小企業基盤整備機構 よろず支援拠点)。都道府県ごとに拠点があります。
日本政策金融公庫
運転資金の調達を検討する段階では、日本政策金融公庫の融資制度も選択肢になります。公式サイトには小規模事業者・個人事業主向け、中小企業向けなどの区分と、融資制度を探すページ、災害等相談窓口が用意されています(出典:日本政策金融公庫)。
融資の相談では、決算書や資金繰り表をもとに状況を説明する場面が多くなります。決算書の読み方を押さえておくと、相談の場で話を進めやすくなります。
消費者ホットライン188
消費者庁は「困ったときは、一人で悩まずに、消費者ホットライン188にご相談ください」として、身近な消費生活センターや消費生活相談窓口を案内する番号を公表しています(出典:消費者庁 消費者ホットライン)。こちらは消費者としての相談窓口であり、事業に関する相談は対象外となる場合があります。事業の資金繰りについては、よろず支援拠点や公庫の窓口のほうが適しています。
二度目を起こさない社内の段取り
1. カードごとの締め日・支払日を1枚の表にする
2. 支払日の3営業日前に残高を確認する担当を決める
3. 大口決済をした日に、その金額を資金繰り表へ即反映する
4. 支払日の異なるカードを併用して、1日に集中させない
5. 口座の入出金通知をオンにしておく
特に効くのが3番です。法人カードは支払いが1〜2か月先になるため、使った実感と資金の減りにタイムラグが生まれます。決済した日に金額を記録する習慣が、引き落とし日の事故を減らします。枠と社内ルールの組み合わせ方は「法人カードで経費の上限を管理する方法|利用可能枠の仕組みと社内ルールの組み合わせ方」で扱っています。
決済した日に記録を残すには、受け取ったレシートをその場で入れておけるファイルを用意しておくと、資金繰り表への反映を後回しにしにくくなります。

よくある質問
Q. 支払日に間に合わなかったら、その日のうちに入金すれば大丈夫ですか
金融機関によっては当日中の再処理があり、間に合うこともあります。ただし対応は金融機関とカード会社の約定によるため、入金しただけで安心せず、カード会社の案内で振込が必要かどうかを確認してください。
Q. 支払ったのにカードが使えないままです
再開までにはタイムラグがあります。三井住友カードの案内では、支払日が6日・8日の方について、カード利用再開予定日を振込日の3営業日後としています。会社や支払方法によって日数は変わるため、急ぎの決済予定があるなら別のカードを用意しておくのが現実的です。
Q. 引き落としができなかった分は、社員のカードも止まりますか
法人カードは契約している法人単位で管理されるため、追加カードや使用者カードも利用できなくなることがあります。取引先との予定が入っている社員がいる場合は、早めに共有しておくと混乱が小さくて済みます。
Q. 遅延損害金はどこで確認できますか
会員規約に率と計算方法が書かれています。三井住友カードの法人会員規約(ビジネスパーチェシング用)では年14.6%と定められていますが、率は会社や商品によって異なるため、自社のカードの規約をご確認ください。規約の読み方は「法人カードの会員規約はどこを読むか|適用される規約の見分け方と社内で起きやすい違反」で整理しています。
Q. 引き落とし口座を別の口座に変えたいのですが
変更の手続きはカード会社の会員サイトまたは所定の届出用紙で行います。変更が反映されるまでに時間がかかることがあるため、次の支払日に間に合うかどうかを事前に確認してください。口座の考え方は「法人カードの引き落とし口座はどう指定する」をご覧ください。
Q. カードが止まっている原因が引き落としかどうか分かりません
決済が通らない原因は引き落とし以外にもあります。利用枠や有効期限、本人認証の未登録など、その場で通らない理由の切り分けは「法人カードが使えないときの原因の切り分け方」、カード会社の判断で止まっているケースは「法人カードが利用停止になる理由と再開までの道筋」で扱っています。
まとめ
引き落としができなかったときにやることは、実はそう多くありません。カード会社に連絡して支払方法を確認する、案内された方法で入金する、再開の目安日を把握して社内に共有する。この3つです。
遅れた期間には遅延損害金がかかり、支払状況は信用情報機関にも登録されます。ただし何がどれだけ登録されるかは機関ごとに定めが異なり、CIC・JICC・全国銀行個人信用情報センターは、それぞれ自社サイトで登録項目と保有期間を公表しています。不安を推測で膨らませるより、公表されている内容を見るほうが落ち着いて動けます。
そして、資金繰りが厳しい時期は事業をしていれば誰にでも訪れます。よろず支援拠点のように無料で何度でも相談できる公的な窓口があるので、社内だけで抱え込まずに使ってください。なお、各社の手続きや料率は改定されることがあります。最新の情報は、ご利用のカード会社の公式サイトでご確認ください。


