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学習塾・スクールが法人カードを使う前に|前受金と中途解約を踏まえた支払いの組み立て

業種・法人形態別の選び方

学習塾やスクールの経営でいちばん誤解されやすいのは、口座の残高です。春に入学金と年間の授業料がまとまって入り、通帳の数字は大きくなります。しかしその中身は、これから提供する授業の代金を、先に預かっているお金です。使い切ってよいお金ではありません。

この記事では、法人カードの話に入る前に「前受金」という塾特有の性質を確認し、そのうえで支出をどう組み立てるかを整理します。学習塾には特定商取引法上の規制もかかっており、中途解約と返金の可能性が制度として想定されている点も、資金の扱いに関わってきます。

ナビ助
ナビ助
塾って、他の商売と逆で「お金が先に入って、サービスが後」なんだよね。だから通帳の数字を見て安心すると、あとで足りなくなることがあるんだ。

売上は「前受け」。手元の現金は使えるお金ではない

入ってきた時点では、まだ売上ではない

年間の授業料を4月に一括で受け取ったとしても、その全額が4月の売上になるわけではありません。授業を提供した分だけが売上になり、まだ提供していない分は前受金として負債に残ります。通帳の残高と、使ってよい金額は一致しないということです。

これは飲食店やECのように「売ってから入金される」業種とは正反対の構造です。飲食店の資金繰りは「飲食店の仕入れに法人カードを使う前に|決済できる仕入先とインボイスの確認事項」で扱いましたが、塾はその逆側に立っています。

年間で見ると、収入は前半に偏る

時期 収入の動き 支出の動き
入会シーズン 入学金・教材費・年間授業料が集中 広告費、教材の一括仕入れ
通常期 月謝が中心 講師への支払い、家賃、光熱費
講習期 季節講習の費用が入る 講師の増員、教室の確保
年度末 収入は細る 次年度の準備が始まる

入会シーズンにまとまって入るお金を、年度の後半まで持たせる必要があります。この設計を誤ると、年度末に資金が薄くなります。

年間を通した資金の持たせ方は、塾経営の解説書で一度整理しておくと、計画を立てやすくなります。

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中途解約と返金は、制度として想定されている

学習塾は特定継続的役務提供にあたる

特定商取引法では、一定の要件を満たす役務について「特定継続的役務提供」として規制が設けられています。消費者庁の特定商取引法ガイドによると、学習塾・家庭教師・語学教室はいずれも、期間が「2月を超えるもの」、金額が「5万円を超えるもの」という要件で対象になります(出典:消費者庁 特定商取引法ガイド 特定継続的役務提供/記事執筆時点)。

この金額の要件には、入会金・授業料・教材費・関連商品の販売分が含まれると整理されています。年間契約であれば、多くの塾がこの範囲に入ります。

返金の可能性がある前提で、資金を持つ

特定継続的役務提供に該当すると、契約書面の交付やクーリング・オフ、中途解約に関する定めが適用されます。つまり、預かった授業料の一部を返す場面が、制度上あらかじめ想定されているということです。

注意

入会シーズンに入ったお金をその時期の支出で使い切ってしまうと、退会が重なったときに返金の原資が足りなくなります。前受金の一部は動かさずに置いておくという運用が、塾の資金管理では現実的です。制度の詳細と自塾の契約が該当するかは、消費者庁のページと弁護士等の専門家にご確認ください。

ナビ助
ナビ助
「2か月を超えて、5万円を超える」って線があるんだね。年間の契約だとほとんど入っちゃうから、自分の塾が対象かどうかは一度ちゃんと確認しておきたいところだよ。

だからこそ、支出は締め日と支払日で管理する

出ていく日をそろえると、残すべき額が見える

収入が前半に偏り、しかも一部は返す可能性がある。この状況で有効なのは、支出の日付をそろえて、月ごとに必要な現金を固定することです。カードにまとめると、教材費も広告費も消耗品も、引き落とし日が1日に集約されます。

三井住友カードは、三井住友ビジネスカードおよびビジネスオーナーズの支払日について「15日締め翌月10日お支払い」または「月末締め翌月26日お支払い」と案内しています(出典:三井住友ビジネスカード 公式サイト/記事執筆時点)。月謝の入金日と引き落とし日の順番を確認し、入金が先に来るように締め日を選ぶと、毎月の資金の見通しが立てやすくなります。

教材の一括仕入れは、支払いのピークを作る

年度初めに1年分の教材をまとめて発注すると、その月だけ決済額が跳ね上がります。カードの利用可能枠に対して、この一時的なピークが収まるかを事前に確認しておく必要があります。枠の考え方は「限度額が高い法人カードが必要な場面とは|おすすめの枠の決め方と確保方法」で扱っています。

教材の発注書や納品書は、年度ごとにファイルボックスへまとめておくと、教室ごとの確認がしやすくなります。

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講師への支払いは、給与か外注費か

判定の4項目を、塾の実務に当てはめる

アルバイト講師を雇用する形と、業務委託契約で授業を任せる形が併存している塾は少なくありません。この区分については、国税庁の消費税法基本通達1-1-1「個人事業者と給与所得者の区分」が、区分が明らかでないときに総合勘案する事項として次の4つを挙げています。

消費税法基本通達1-1-1が挙げる4つの事項
  • (1) その契約に係る役務の提供の内容が他人の代替を容れるかどうか。
  • (2) 役務の提供に当たり事業者の指揮監督を受けるかどうか。
  • (3) まだ引渡しを了しない完成品が不可抗力のため滅失した場合等においても、当該個人が権利として既に提供した役務に係る報酬の請求をなすことができるかどうか。
  • (4) 役務の提供に係る材料又は用具等を供与されているかどうか。

出典:国税庁 消費税法基本通達 第1章第1節(個人事業者と給与所得者の区分)/記事執筆時点

塾の場合、(1)の代替性がわかりやすい判断材料になります。担当講師が休んだときに、塾が別の講師を手配して同じ授業を行う運用であれば、その役務は特定の個人に紐づいていないことになります。逆に、講師が自分で代わりを立てられる契約なら、性質は変わってきます。

(4)についても、教材やテキスト、教室の設備を塾がすべて用意している状態は、判定の材料のひとつになります。支払い方をカードに変えても、この区分が変わるわけではありません。実際の判断は顧問税理士にご相談ください。

広告費の季節性をどう扱うか

塾の広告費は、入会シーズンとその直前に集中します。この時期は教材の仕入れとも重なるため、支出のピークが二重に来ます。IT企業の広告費については「IT企業に合う法人カードの選び方|広告費とSaaS費用を1枚にまとめる考え方」で扱いましたが、塾の場合は運用型広告に加えて、チラシの折込やポスティングといった前払いの支出も入ってきます。

紙媒体の広告は、業者がカード決済に対応していないこともあります。カードに寄せられる支出とそうでない支出を先に仕分けておくと、必要な枠の見積もりが正確になります。

ナビ助
ナビ助
入会シーズンって、広告も教材も講師の募集も全部いっぺんに来るんだよね。この時期だけで年間の支出のかなりの割合を使うから、枠の確認は年明けまでにやっておきたいね。

申し込みの前に確認しておきたいこと

教室が複数ある場合、教室長にカードを持たせるかどうかを決めておきます。三井住友カード ビジネスオーナーズの公式サイトでは、パートナーカードを18枚まで申し込めると案内されています。ただし「本会員と同時にお申し込みの場合、パートナーカードを1枚のみお申し込みできます」との注記があり、2枚目以降は本会員のカード到着後の手続きになります(出典:三井住友カード ビジネスオーナーズ 公式サイト/記事執筆時点)。

同ページでは申し込み対象を「満18歳以上(高校生は除く)の法人代表者、個人事業主(副業、フリーランスを含む)の方」とし、年会費は「本会員、パートナー会員ともに永年無料」と案内しています。決済口座の指定については「法人カードの引き落とし口座はどう指定する|法人口座・屋号付き口座の設定方法」も参考になります。

校舎が増えたときに、何が変わるか

教室ごとの支出は、集計してはじめて比較できる

教室が2つ、3つと増えると、同じ規模の校舎なのに消耗品費や光熱費に差が出てくることがあります。差が出ること自体は問題ではありませんが、差があることに気づける状態になっているかが重要です。

教室長ごとにカードを分けておくと、明細が自動的に校舎別に分かれます。集計の手作業が減るだけでなく、どの校舎でどの費目が膨らんでいるかを月次で追えるようになります。一方、本部で一括にすると発注の単価は下げやすくなりますが、校舎別の内訳は手作業で振り分けることになります。

教室ごとに持たせる 本部で一括
校舎別の集計 自動で分かれる 手作業が必要
発注の単価 ばらつきやすい まとめて下げやすい
現場の機動力 高い 本部を通すぶん遅い
管理の手間 枚数分だけ増える 1枚で済む
ナビ助
ナビ助
校舎が2つになったタイミングが分かれ目だと思うんだ。ここで分けておかないと、あとから「どっちの教室の支出だっけ」を1年分さかのぼることになるからね。

校舎を増やすときは、ホワイトボードなどの教室備品も校舎ごとに必要になります。

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よくある質問

Q. 前受金があるうちは、資金繰りは楽ではないのですか

一時的には現金があるという意味で楽に見えますが、そのお金は未提供のサービスに対応する負債です。年度の後半に向けて計画的に取り崩していく必要があります。手元の現金の何割が前受金かを把握しておくことをおすすめします。

Q. 中途解約の返金にカードの利用可能枠は使えますか

返金は現金の支出ですので、カードの枠で代替できるものではありません。返金の原資は現金として確保しておく必要があります。カードでできるのは、他の支出の引き落とし日を後ろにずらすことだけです。

Q. 教材の仕入れをカードにまとめると、その期の経費になりますか

生徒に販売する教材で、期末に在庫として残っている分は棚卸資産になります。塾が授業で消費する分と、販売用の分では扱いが変わることがありますので、処理の方法は税理士にご確認ください。

Q. 業務委託の講師に追加カードを渡してもよいですか

カード会社の規定で使用者の範囲がどう定められているかの確認が必要です。加えて、税務上は給与か外注費かの区分に関わる要素になりえます。契約の実態と合っているかを税理士に確認したうえで判断してください。

Q. オンライン授業のシステム利用料もカードで払えますか

多くのサービスがカード決済に対応しています。月額のサービスが増えると解約漏れが起きやすくなりますので、契約台帳を作っておくことをおすすめします。管理の方法は「法人カードでサブスクの支払いを管理する方法|解約漏れとコストの見える化」で整理しています。

Q. 月謝をカード払いにすれば、資金繰りは改善しますか

それは生徒側の支払い手段の話で、塾が使う法人カードとは別のテーマです。決済代行を導入すると入金が数週間後になることがあり、かえって入金が遅くなる場合もあります。導入前に入金サイクルをご確認ください。

まとめ

学習塾・スクールが法人カードを検討するときは、まず手元の現金のうち、どれだけが前受金かを把握するところから始めるのが実務的です。入会シーズンの残高を基準に支出を組むと、年度後半に苦しくなります。

学習塾は特定商取引法の特定継続的役務提供にあたり、期間が2月を超え、金額が5万円を超える契約が対象になります。中途解約と返金が制度として想定されている以上、前受金の一部は動かさずに置いておく必要があります。そのうえで、カードにできるのは支出の引き落とし日をそろえて後ろにずらすことです。

講師への支払いが給与か外注費かは、支払方法ではなく契約と実態で判断されます。カードにまとめることでこの区分が変わるわけではない点は、混同しないようご注意ください。制度もカードの条件も改定されることがありますので、消費者庁・国税庁の各ページと、カード会社の公式サイトで最新の内容をご確認のうえ、個別の判断は税理士や弁護士等の専門家にご相談ください。

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