海外出張の精算をしていて、「あれ、現地で見た金額と請求額が違う」と感じたことはないでしょうか。原因の多くは海外事務処理手数料です。カード会社が外貨決済に対して上乗せする費用で、料率はカード会社ごとに違い、改定されることもあります。
この記事では、カード会社が公式サイトで公開している料率と換算ルールをもとに、法人カードの海外利用でかかるコストの見方を整理します。数値は記事執筆時点で各社の公式サイトに掲載されている内容です。料率は改定されるため、実際に使う前に必ず各社の公式ページでご確認ください。

海外事務処理手数料とは何か
三井住友カードは公式サイトで、海外事務処理手数料を「外貨によるカード決済が行われた際、海外取引に関する事務処理費用として弊社が設定する手数料」と説明しています。つまり国際ブランドが決める為替レートとは別に、カードの発行会社が独自に設定している上乗せ分ということです。
明細に「手数料」の行は出てこない
ここが分かりにくい点です。三井住友カードは「ご利用明細に記載の『換算レート』は、海外事務処理手数料加算後のレートです」と明記しています。手数料が独立した行として計上されるのではなく、為替レートに溶け込む形で請求されるため、明細を見ただけでは手数料の存在に気づきにくいのです。
「思ったより請求額が高い」と感じるのは、この構造が理由であることが少なくありません。
公式サイトで公開されている料率
各社が公式サイトで公開している内容を並べます。
| カード会社 | 区分 | 上乗せ分 |
|---|---|---|
| 三井住友カード | クレジットカード(Visa・Mastercard) | 3.63%(税込) |
| クレジットカード(銀聯) | 2.50%(税込) | |
| デビットカード(Visa) | 3.63%(税込) | |
| JCB | クレジットカード | 換算日の基準レートに1.6%を加える |
三井住友カードの料率は、同社の「海外でのご利用にあたって」のページに掲載されている数値です。JCBについては、公式サイトで「換算日の基準レートに1.6%を加えた換算レートで日本円に換算します」と説明されています。
三井住友カードは料率を改定している
三井住友カードは公式のお知らせで、海外事務処理手数料の改定内容を公表しています。それによると、クレジットカード(Visa・Mastercard)は改定前が2.20%(税込)、改定後が3.63%(税込)。デビットカード(Visa)は改定前が3.05%(税込)、改定後が3.63%(税込)です。適用時期は「2024年11月1日(金)以降に弊社に到着した売上より適用」とされています。
同社は改定の理由として、海外におけるクレジットカード取引の環境変化や海外取引に関連するコスト増加を挙げています。1%以上の引き上げ幅ですから、以前の料率を前提に海外コストを見積もっていた会社は、計算を見直す必要があります。
古い情報を掲載したまま更新されていない解説記事では、改定前の料率がそのまま書かれていることがあります。海外事務処理手数料は改定されるものだという前提に立ち、出張の精算基準を作るときは各社の公式ページで最新の数値を確認してください。なお三井住友カードは、Amazon Mastercardがこの改定の対象とならない旨も別途案内しています。
海外出張ではカードとパスポートをまとめて持ち歩く場面が増えるため、出し入れしやすいパスポートケースを用意しておく方も多いです。
料率の数字だけでは比較しきれない
ここは正確に押さえておきたいところです。三井住友カードの3.63%もJCBの1.6%も、どちらも「国際ブランドが決める基準レートに、カード会社が上乗せする分」という位置づけです。ただし、そのベースとなる基準レート自体はブランドごとに決まるため、上乗せ率の数字だけで最終的な請求額の優劣が決まるわけではありません。
それでも、上乗せ率の差は請求額に直接効いてきます。海外での決済が多い事業者ほど、この差を無視できません。

いつのレートで円に換算されるのか
もうひとつ理解しておきたいのが「換算日」です。カードを使った日のレートで計算されるわけではありません。
三井住友カードの場合
公式サイトでは、外貨でのショッピング利用代金は「Visa、Mastercard、または中国銀聯(以下、国際提携組織)の決済センターに売上データが到着した時点で、国際提携組織が指定する為替レートに、弊社が海外事務処理手数料として所定の費用を加えた為替レートで日本円に換算します」と説明されています。
JCBの場合
JCBは「JCBが海外の加盟店などに、お客様のご利用代金の支払い処理を行った日が換算日となります」としたうえで、「通常、ご利用日から約3〜10日後が換算日となります」と案内しています。
つまり利用した日と換算された日の間に数日から10日程度の開きがあるということです。この間に為替が動けば、現地で見た金額と請求額はずれます。為替が大きく動いた時期の出張精算で数字が合わないときは、まずここを疑ってください。
出張精算の社内ルールを作るときは、「現地での支払額(外貨)」と「カード明細の円換算額」の両方を記録する運用にしておくと、差額の説明がつきます。カード明細の円換算額を正とするか、社内レートを使うかは、あらかじめ決めておきましょう。
現地の支払額を記録するには、レシートを捨てずに持ち帰るのが確実です。出張中はレシートをまとめて入れておけるポーチがあると、帰国後の精算がスムーズです。
日本円建てを選ぶと割高になることがある
海外の店舗やホテルで「日本円で決済しますか」と聞かれることがあります。いわゆるDCC(Dynamic Currency Conversion)と呼ばれる仕組みです。
三井住友カードは公式サイトで、日本円を指定した場合について「その場で支払金額を確定できるメリットがありますが、お店が決定した為替レートで日本円に換算されることから、弊社で日本円に換算する場合に比べて割高になる可能性がありますのでご注意ください」と説明しています。さらに「日本円での請求を希望しない場合は、その場でお店へ申し入れを行ってください」とも案内されています。
また同社は、この仕組みは店が独自に提供しているサービスであるため、利用できる店や為替レートについてはカード会社では案内できないとしています。その場で金額が確定する安心感と引き換えに、レートが不利になる可能性があるというのが実態です。
JCBも関連して、「商品の保証書や明細書に日本円の金額が書かれていた場合でも、売上票の現地通貨が優先されます」と案内しています。売上票にサインや暗証番号入力をする際は、金額と通貨を確認する習慣をつけておきましょう。
加盟店が上乗せする手数料(サーチャージ)
もうひとつ、カード会社の手数料とは別に発生する費用があります。三井住友カードは「国によっては、加盟店がカード利用手数料を商品やサービスの代金に加算して、お客さまへ請求することが認められている場合がございます」と説明し、料率については店頭で直接確認するよう案内しています。
つまり、現地の店が独自に上乗せする分は、カード会社の手数料とは別物です。渡航先の商習慣によっては、これも見積もりに入れておく必要があります。
海外キャッシングの扱いは別
海外ATMでの現地通貨引き出しについては、ショッピング利用と扱いが異なります。三井住友カードは「海外キャッシュサービスについては、海外事務処理手数料がかかりません」と明記しています。JCBも「海外キャッシング1回払い(海外キャッシングサービス)については、換算日の基準レートを換算レートとして日本円に換算します」としており、上乗せ分がかからない旨を案内しています。
ただし、キャッシングには借入日から返済日までの利息が発生します。事務処理手数料がかからないことと、コストがゼロであることは別の話です。金利や返済方法はカード会社ごとに異なるため、利用前に条件を確認してください。なお、三井住友カードはデビットカードでの海外ATM利用時には海外事務処理手数料が加算されるとしており、商品種別によって扱いが変わる点にも注意が必要です。

日本にいても外貨取引になっている場合がある
見落とされがちなのがこのケースです。三井住友カードは公式サイトで「日本語表記のインターネットサイトや通信販売などであっても、外貨でのお取引となる場合があります」と明記しています。
海外事業者が提供するクラウドサービスや広告プラットフォームの利用料が、これに当たることがあります。海外出張がない会社でも、外貨建て決済によって海外事務処理手数料を負担している可能性があるということです。サブスクの棚卸し方法は「法人カードでサブスクの支払いを管理する方法|解約漏れとコストの見える化」で解説しています。
コストを抑えるための考え方
- 海外決済の多い支出は、上乗せ率の低いカードに寄せる
- 店で日本円建てを勧められたら、現地通貨建てを選ぶ
- 還元率だけでなく、上乗せ率とセットで実質コストを見る
- 外貨建てのサブスクがないか、年に一度は明細で確認する
- 渡航先にサーチャージの商習慣があるかを事前に調べる
海外での利用が多い会社なら、海外用と国内用でカードを使い分ける設計も検討に値します。組み合わせの考え方は「法人カードの2枚持ちで組む組み合わせパターン|ブランド・年会費・締め日で設計する」で扱っています。海外出張が多いなら、付帯保険の条件も重要な判断材料になります。詳しくは「法人カードの海外旅行保険を徹底比較!自動付帯と利用付帯の違い」を参照してください。
海外出張の準備では、渡航先のコンセント形状に合わせた変換プラグも忘れずに用意しておくと安心です。
参考にした公式ページ
よくある質問
Q. American Expressやダイナースの料率はどれくらいですか。
この記事では、公式サイトで料率を確認できた三井住友カードとJCBのみを掲載しています。他社の料率については、各カード会社の公式サイトまたは会員規約で確認してください。確認できない数値を推測で掲載することは避けています。
Q. 手数料は経費にできますか。
海外事務処理手数料は換算レートに含まれる形で請求されるため、実務では円換算後の金額を取引額として処理するのが一般的です。処理方法は会社の会計方針によるため、迷う場合は顧問税理士に確認してください。
Q. 現地通貨で払うのと日本円で払うのはどちらが得ですか。
三井住友カードは、日本円を指定すると店が決定した為替レートで換算されるため、カード会社で換算する場合に比べて割高になる可能性があると案内しています。どちらが有利かはその場のレート次第ですが、レートが分からないまま選ぶなら現地通貨建てのほうが判断材料は多くなります。
Q. 為替が動いたら請求額は変わりますか。
換算日のレートで確定します。利用日から換算日まで数日から10日程度の開きがあるため、その間の為替変動は請求額に影響します。
Q. 返金があった場合の金額は同じになりますか。
JCBは、取消伝票が作成された場合に請求と返金の両方が到着することがあり、その場合は換算レートの違いにより請求と返金の日本円の金額が異なることがあると案内しています。差額が出ても、仕組み上あり得る動きです。
Q. タッチ決済で払っても手数料は同じですか。
決済の方法ではなく、決済通貨が外貨かどうかで判断されます。タッチ決済かカードを挿す方式かによって、海外事務処理手数料の扱いが変わるわけではありません。タッチ決済の仕組みは「法人カードのタッチ決済ガイド|対応の見分け方と選ぶときの確認ポイント」で解説しています。

まとめ
海外事務処理手数料は、国際ブランドが決める為替レートにカード会社が上乗せする費用で、明細では換算レートに含まれる形で請求されます。記事執筆時点の公式情報では、三井住友カードがクレジットカード(Visa・Mastercard)で3.63%(税込)、銀聯で2.50%(税込)、JCBは換算日の基準レートに1.6%を加えると案内しています。
三井住友カードは2024年11月1日以降に到着した売上から料率を改定しており、それ以前の数値を前提にしたコスト見積もりは更新が必要です。換算日は利用日ではなく、JCBの案内では通常、利用日から約3〜10日後とされています。
店頭で日本円建てを選ぶと割高になる可能性があること、国によっては加盟店がサーチャージを上乗せすること、海外キャッシングには事務処理手数料がかからない代わりに利息が発生することも、判断材料として押さえておきましょう。料率は改定されるため、最新の内容は必ず各カード会社の公式サイトでご確認ください。

