航空券の手配は、鉄道やホテルと似ているようで、実務上の扱いがかなり違います。予約した人と実際に乗る人が別になりやすく、変更や取消のたびに手数料の性格が変わるからです。そのうえ国際線になると外貨建ての決済が絡んできます。
この記事では、法人カードで航空券を押さえるときに確認しておきたい論点を、名義・取消手数料の経理・マイルの扱い・海外決済の4つに分けて整理します。出張の予約から精算までの全体像は「出張の予約と精算が楽になる法人カードの使い方」で扱っているため、こちらは航空券に固有の部分にしぼります。

予約者と搭乗者が違うときに何を見るか
3つの名義が登場する
航空券の手配には、少なくとも3つの名義が関わります。予約を入れた人の名義、搭乗者の名義、決済に使ったカードの名義です。総務担当者がまとめて手配する会社では、この3つがすべて別人になることも珍しくありません。
会社の法人カードで社員の航空券を買うこと自体は、業務上の支出であれば問題のある取引ではありません。ただし、航空会社や旅行会社によっては、本人名義以外のカードで決済する場合の取扱いを規約で定めていることがあります。カードの本人確認を求められるケースもあるため、初めて使う予約経路では、決済に関する規定を先に読んでおくほうが安全です。取扱いは各社で異なり、変更されることもあるため、詳細は各社の公式サイトでご確認ください。
社員が増えてきたら、手配担当者用のカードを1枚立てるという方法があります。決済に使う名義が固定されるため、規約の確認も一度で済み、明細も追いやすくなります。追加カードの考え方は「法人カードを社員に持たせるときのルールづくり」で整理しています。
搭乗者の氏名は後から直せないことが多い
航空券は、鉄道の指定席と違って搭乗者の氏名が券面情報として登録されます。氏名の入力を誤ると、変更ではなく取消・買い直しになる場合があります。カードの決済も、いったん取消してから再度発生する形になるため、明細に2行並ぶことになります。
飛行機での出張が多い方は、手荷物の預け入れや受け取りの待ち時間を省ける、機内持ち込みサイズのキャリーケースがあると移動が楽になります。
取消手数料と払戻手数料は、経理上の扱いが分かれる
ここが航空券でいちばん見落とされやすい部分です。「キャンセル料」とひとまとめに呼ばれているものの中に、性格の違う2種類が混ざっています。
国税庁が示している区分
国税庁は、いわゆるキャンセル料といわれるものの中には、解約に伴う事務手数料としての性格のものと、解約に伴い生じる逸失利益に対する損害賠償金としての性格のものとがあるとしたうえで、消費税の取扱いを次のように示しています(出典:国税庁 No.6253 キャンセル料/令和7年4月1日現在法令等)。
| 性格 | 国税庁が挙げている例 | 消費税 |
|---|---|---|
| 解約に伴う事務手数料 | 航空運賃のキャンセル料などで、解約等の時期に関係なく一定額を受け取ることとされている部分の金額 | 課税の対象 |
| 逸失利益に対する損害賠償金 | 航空運賃のキャンセル料などで、搭乗区間や解約等の時期などにより金額の異なるもの | 課税の対象とならない |
同じページには、事業者がその全額について事務手数料に相当する部分と損害賠償金に相当する部分を区分することなく一括して受領しているときは、その全額を不課税として取り扱うこととされている、との説明もあります。
明細だけでは判断できない
カードの利用明細には、金額と航空会社名しか出てきません。その金額のうちいくらが定額の手数料で、いくらが時期によって変動する部分なのかは、払戻の内訳が書かれた書類を見ないと分かりません。取消が発生したときは、金額だけでなく内訳の分かる書類を回収するルールにしておくと、後から迷わずに済みます。
回収した払戻の書類は、航空券の領収書と同じファイルにまとめておくと、明細との照合がしやすくなります。

マイルは誰のものか、を先に決めておく
航空券を会社の経費で買えば、その分のマイルが貯まります。ここで論点になるのが、会社の支出で発生したマイルを、社員が私的な旅行に使ってよいのかという問題です。
航空会社のマイレージプログラムは、原則として個人の会員に対して提供される仕組みです。会社名義でマイルをまとめて管理できるかどうかは、各社のプログラムの設計によります。ANAは公式サイトで、航空券や機内販売を利用した際の積算マイル数や積算登録の方法を案内しており、提携サービスの積算条件についてはサービス利用前に各提携先の案内ページを確認するよう示しています(参考:ANAマイレージクラブ 航空券・機内販売)。積算の条件は路線や運賃種別によっても変わるため、詳細は各航空会社の公式サイトでご確認ください。
実務としては、次のどちらかを社内で明文化しておくのが現実的です。ひとつは、業務で発生したマイルは業務用の航空券や座席のアップグレードに充てるという扱い。もうひとつは、少額であることを踏まえて社員に帰属させると割り切る扱いです。どちらを選ぶにしても、決めていない状態が一番トラブルになります。
会社の資産を私的に使う形になっていないかという視点は「法人カードの私的利用が問題になる理由」で整理しています。ANAとJALのどちらを主軸にするかという選び方は「ANAマイルとJALマイル、法人カードでどちらを狙うか」もあわせてご覧ください。
マイルやポイントの税務上の取扱いは、付与の条件や使い方によって考え方が変わります。金額が大きくなってきた場合や、換金性の高い使い方をする場合は、顧問税理士にご相談ください。
マイルの貯まり方や使い道の基本は、マイルを解説した本で整理しておくと、社内ルールを決める際の参考になります。
国際線は決済通貨と手数料を見る
国際線の航空券は、予約経路によって決済通貨が変わることがあります。日本の予約サイトから円建てで買う場合と、海外の航空会社のサイトから現地通貨建てで買う場合とでは、カードの明細に出てくる金額の作られ方が違います。
外貨建ての決済では、カード会社が定める換算のルールと、海外事務手数料が上乗せされます。同じ航空券でも、どのカードで払うかによって最終的な円貨額が変わるということです。料率はカード会社ごとに異なり、改定されることもあります。この論点は「法人カードの海外利用手数料を比較」で詳しく扱っています。
なお、国際線の航空券には海外での支払いに関する保険や、空港ラウンジの利用条件も関わってきます。旅行保険は予約時にどのカードで決済したかで適用の可否が変わる場合があるため、「法人カードの海外旅行保険を徹底比較」と「法人カードで空港ラウンジを無料利用」もあわせて確認しておくと判断がしやすくなります。
海外出張では、パスポートとカードをまとめて持ち歩けるスキミング防止機能付きのパスポートケースを、補助的な備えとして使う方もいます。
インボイスと航空券
航空券の代金についても、インボイス制度上の取扱いを押さえておく必要があります。インボイス制度では、一定の事項が記載された帳簿および適格請求書等の保存が仕入税額控除の要件とされており、適格請求書は登録を受けた適格請求書発行事業者でなければ交付できないとされています(出典:国税庁 No.6498 適格請求書等保存方式(インボイス制度)/令和7年4月1日現在法令等)。出張旅費等特例や公共交通機関特例といった仕組みもあり、対象になる支出とならない支出があります。カードの利用明細書は適格請求書には該当しないため、明細を保存しただけで完結するわけではありません。
詳しくは「法人カードのインボイス対応」で整理しています。旅行会社経由で手配した場合は、誰が何を発行するのかが変わることもあるため、あわせてご確認ください。

よくある質問
Q. 社員の航空券を会社の法人カードで買っても問題ありませんか?
業務上必要な出張であれば、会社の支出として処理できます。ただし予約経路によっては、決済に使うカードの名義に関する取扱いが定められていることがあります。初めて使うサイトでは、規約や案内ページの決済に関する記載をご確認ください。
Q. 取消手数料の勘定科目はどうなりますか?
実務上は旅費交通費のまま処理する会社もあれば、支払手数料や雑損失に振る会社もあります。金額の性格によって消費税の扱いが分かれるため、社内で処理方法を統一しておくのが大切です。判断に迷う場合は税理士にご相談ください。
Q. 予約を取り消したのにカードの請求が来ました。どうすればよいですか?
取消の処理と、カード会社への売上取消のデータが届くタイミングにはずれがあります。締め日をまたぐと、いったん請求されてから翌月に返金される形になることがあります。予約サイトの履歴と明細を照らして、返金の行が立っているかを確認してください。
Q. マイルを会社でまとめて管理することはできますか?
法人向けのプログラムを用意している航空会社もありますが、条件や加入方法は各社で異なります。個人のマイレージ口座に貯める前提のプログラムもあるため、現在の取扱いは各航空会社の公式サイトでご確認ください。
Q. 国際線を円建てで買えば、海外事務手数料はかかりませんか?
日本国内の事業者から円建てで購入した場合は、海外での利用として扱われないのが一般的です。ただし、海外の航空会社のサイトから購入した場合は、表示が円であっても海外利用として処理されることがあります。判定はカード会社の規定によるため、明細の表示を確認してください。
Q. 出張が多い会社は、航空券専用のカードを分けたほうがよいですか?
航空券は1件あたりの金額が大きく、繁忙期に集中しやすい支出です。他の経費と同じカードにまとめると、利用可能枠を圧迫する場面が出てきます。枠の考え方は「限度額が高い法人カードの選び方」で整理しています。

まとめ
航空券を法人カードで手配するときは、予約者・搭乗者・カード名義という3つの名義が絡みます。まずは誰の名義で決済するかを固定し、予約経路ごとの規約を確認するところから始めるのが近道です。
経理面でいちばん独特なのが、取消手数料の扱いです。国税庁は、航空運賃のキャンセル料のうち解約等の時期に関係なく一定額を受け取ることとされている部分は事務手数料として課税の対象になり、搭乗区間や解約等の時期などにより金額の異なるものは逸失利益に対する損害賠償金として課税の対象にならないと示しています。金額だけでなく内訳の書類を残すことが、この区分を支えます。
マイルの帰属は、社内で先に決めておくべきテーマです。国際線では決済通貨と海外事務手数料が最終的な金額を左右します。いずれも各社の規定によるため、実際の判断の前には航空会社とカード会社の公式サイトをご確認ください。税務上の取扱いについては、個別の判断は税理士にご相談ください。


