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法人カードを社員に持たせるときのルールづくり|利用規程に入れる項目と運用設計

社内運用・管理ルール

社員に法人カードを持たせると、立替精算の手間が減り、経費の把握も早くなります。ただ、カードを渡すという行為は「会社の支払い手段を個人に預ける」ということでもあります。何をしてよくて何が禁止なのかを文書にしないまま配ると、悪意がなくても判断がぶれ、後から一件ずつ確認する羽目になります。

この記事では、追加カードのメリットや発行条件ではなく、カード利用規程という文書に何を書き、どう周知するかという一点に絞って整理します。追加カードそのもののメリットとリスクは社員に法人カードを持たせるメリットと管理、不正利用への技術的な備えは法人カードの不正利用対策で扱っています。

ナビ助
ナビ助
「常識で考えればわかるでしょ」が一番あぶないんだよね。人によって常識は違うから。紙に書いて渡す、これだけで揉め事の大半は防げるよ。

規程は「禁止事項リスト」ではなく「判断の地図」

利用規程というと、してはいけないことを並べた文書を想像しがちです。ただ実務で困るのは、明らかにダメなことではなく、判断に迷う支出をその場でどう扱えばよいかがわからない場面です。

たとえば、出張先で同行した取引先の分まで食事代を払ったとき。急ぎの備品をネットで買ったとき。深夜のタクシー代。こうしたケースで社員が迷わず動けるように書かれているかどうかが、規程の実用性を決めます。

ポイント

規程を作るときは、過去半年分の利用明細を見返して「これは判断に迷ったな」という行を拾い出してください。実際に起きたケースをもとに書くと、現場で使われる文書になります。

規程を一から書くのが難しい場合は、社内規程の作り方をまとめた本を参考にする方法もあります。

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利用規程に入れる項目

会社の規模や業種によって必要な項目は変わりますが、最低限おさえておきたいのは次の要素です。

項目 書く内容
目的 何のためにカードを貸与するのか
対象者 どの職位・職種に貸与するか、申請と承認の手続き
使える支出 交通費、宿泊費、備品、広告費など具体的な費目
使えない支出 私的な支出、現金化を伴う取引、規程外の高額決済など
金額の基準 事前承認が必要になる金額、1回あたりの上限
証憑の提出 レシートの提出方法と期限
紛失・盗難時 連絡先と報告の手順、報告の期限
返却 異動・退職時の返却手続きと確認者
違反時の扱い 就業規則のどの条項に基づくかの明記

特に見落とされやすいのが、最後の「違反時の扱い」です。ここは規程の中で完結させるのではなく、就業規則との対応関係を書いておくことが重要になります。

就業規則との関係を先に確認する

厚生労働省が公開しているモデル就業規則では、懲戒の事由を定めた条文の中に「許可なく職務以外の目的で会社の施設、物品等を使用したとき」という項目が挙げられています。

同資料の解説には、最高裁判決を引いて、使用者は規則の定めるところにより懲戒処分をなし得ると述べられていること、したがって就業規則に定めのない事由による懲戒処分はできないことが記載されています。あわせて、労働契約法第15条により、客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当と認められない懲戒は無効となる旨も説明されています。

つまり、カード利用規程だけを作っても、就業規則に根拠がなければ処分の根拠にはなりません。規程を整えるときは、就業規則の懲戒条項も合わせて確認してください。私的利用が起きたときの税務上の扱いや是正手順は法人カードの私的利用が問題になる理由で整理しています。

ナビ助
ナビ助
「規程に書いたから処分できる」とは限らないんだよね。就業規則のほうに根拠がいる。ここを知らないまま作ると、いざというときに使えない文書になっちゃう。

カード側の設定で守れる部分もある

文書だけで防ごうとすると、どうしても運用の負担が重くなります。カード会社の機能で自動的に制限できる部分は、そちらに任せたほうが確実です。

利用者ごとの限度額

カードによっては、会社全体の総利用枠とは別に、利用者ごとに枠を設定できる仕組みが用意されています。営業担当と管理部門で必要な枠は違うため、一律ではなく職務に応じて設定するのが合理的です。三井住友カードの法人向けサイトなど、各社の公式サイトで対応状況を確認してください。

利用通知

決済のたびに通知が届く設定にしておくと、本人にも会社にも気づく機会が増えます。カードの紛失や第三者による利用にも早く反応できます。

管理画面での一元確認

JCBの法人カードサービス一覧では、従業員の利用状況を一元管理することで管理業務をサポートするという趣旨の案内がされています。誰がいくら使ったかを画面で見られる状態にしておくと、月次の確認が短時間で済みます。

注意

機能の名称や対応状況はカード会社・カード種別によって異なります。追加カードの発行可能枚数や追加カードの年会費も含めて、発行前に公式サイトで条件を確認してください。年会費や機能は改定されることがあります。

「使ってよい支出」の書き方に工夫がいる

規程が守られるかどうかは、使ってよい支出の書き方でほぼ決まります。ここを「業務に必要な支出」とだけ書くと、判断はすべて個人に委ねられます。逆に細かく列挙しすぎると、書かれていない支出が出るたびに止まります。

実務で扱いやすいのは、費目を大きく挙げたうえで、金額と承認の基準を添える書き方です。たとえば「交通費・宿泊費・書籍・消耗品は事前承認なし。1回3万円を超える支出、および接待を伴う飲食は事前承認が必要」といった形です。費目で線を引き、金額で例外を作ると、条文が短くなり読まれやすくなります。

ナビ助
ナビ助
条文が長いと誰も読まないんだよね。費目でざっくり分けて、金額で例外を作る。この2軸だけで、だいたいの迷いは解決するよ。

社員から提出されるレシートは、月ごとにファイルへまとめておくと月次の確認がしやすくなります。

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また、現金化につながる利用は明確に禁止しておくことをおすすめします。ギフトカードや商品券の購入、キャッシング機能の利用などは、経費としての説明がつきにくく、管理上もリスクが大きい領域です。キャッシング機能の扱いは法人カードでキャッシングはできるのかで解説しています。

渡すときと返してもらうとき

貸与時にやること

規程を読んでもらい、内容を理解したことを書面で確認する手続きを入れておきます。口頭で説明しただけだと、後から「聞いていない」という話になりかねません。あわせて、限度額と使ってよい費目を本人に伝えます。

返却時にやること

異動や退職の際は、カードの物理的な回収だけでなく、オンラインショップやサブスクリプションに登録された決済情報の付け替えまで確認します。カードを回収しても、登録先が残っていれば請求は続きます。

退職手続きのチェックリストにカード関連の項目を入れておくと、抜けが防げます。定期課金の棚卸しは法人カードでサブスクの支払いを管理する方法もあわせてご覧ください。

貸与記録や規程への同意書は、社員ごとにファイルボックスで管理しておくと返却時の確認がしやすくなります。

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ナビ助
ナビ助
退職のときにカードは返してもらったのに、月額サービスの請求だけ残ってた……ってパターン、意外と多いんだ。登録先の付け替えまでがワンセットだよ。

運用が続く仕組みにする

規程を作って配って終わりにすると、半年もすれば形骸化します。続けるために有効なのは、次の3つです。

  • 月次で明細を確認する担当と日付を決める(利用明細を管理する記事を参照)
  • 年に1回、規程を見直す日をカレンダーに入れる
  • 判断に迷ったケースを記録し、次の改訂で条文に反映する

特に3つ目が効きます。現場で起きた迷いを規程に吸収していくと、年を追うごとに実務に合った文書になっていきます。立場によって見え方が変わる点は法人カードのメリット・デメリットを立場別に整理でも触れています。

ポイント

最初から完璧な規程を作ろうとすると、いつまでも運用が始まりません。まずはA4で1枚から始めて、運用しながら育てるほうが現実的です。

よくある質問

Q. 小さい会社でも規程は必要ですか?

人数が少ないほど口頭で済ませがちですが、少人数だからこそ担当が抜けたときの引き継ぎで困ります。1枚でもよいので文書にしておくことをおすすめします。

Q. 規程は就業規則と別に作るべきですか?

カードの運用ルールを細かく書くと就業規則が読みにくくなるため、別文書にしたうえで、懲戒に関わる部分は就業規則を根拠として参照する形が扱いやすくなります。作成にあたっては社会保険労務士に相談してください。

Q. アルバイトにも持たせてよいですか?

追加カードの発行条件はカード会社ごとに定められています。発行できるかどうかと、社内ルールとして渡すべきかどうかは別の問題なので、両面から検討してください。

Q. 限度額はどのくらいに設定すればよいですか?

職務上必要な支出の月間見込みに、多少の余裕を加えた額が目安になります。高すぎると管理が効かず、低すぎると業務が止まるため、運用を見ながら調整してください。

Q. 私的利用が疑われる決済を見つけたら、いきなり本人に問い詰めてよいですか?

まず明細と証憑で事実関係を確認し、そのうえで本人に確認するという順番が安全です。判断を誤ると別の問題を生むため、対応手順も規程に書いておくと迷いません。

Q. 規程のひな形はどこかにありますか?

カード利用規程そのものの公的なひな形は限られますが、就業規則については厚生労働省がモデル就業規則を公開しています。まずはそちらで懲戒の条文を確認し、カード固有の内容を別文書で補うとよいでしょう。

まとめ

社員に法人カードを持たせるときに必要なのは、禁止事項を並べた文書ではなく、現場が迷わず判断できる地図です。目的、対象者、使える支出と使えない支出、金額の基準、証憑の提出、紛失時の対応、返却、違反時の扱い。この骨格を押さえておけば、A4で1枚からでも運用は始められます。

そのうえで、懲戒に関わる部分は就業規則に根拠が必要である点を確認し、限度額や通知といったカード側の機能で守れるところは機能に任せてください。文書と設定の両輪で運用するのが、負担を増やさずに管理を効かせるやり方です。

記載した内容は記事執筆時点で厚生労働省および各社の公式ページに掲載されていたものです。制度やサービス内容は変更されることがあるため、実際の運用にあたっては必ず公式サイトで最新の情報をご確認いただき、労務上の判断は社会保険労務士や弁護士にご相談ください。

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