「法人カードでふるさと納税はできますか」という質問には、そのまま答えられません。というのも、ふるさと納税と呼ばれている制度には、個人向けのものと法人向けのものがあり、中身がまったく違うからです。この2つを混同したまま話を進めると、経費にならない支出を事業用のカードで払ってしまったり、返礼品を期待して寄附したのに何も来ない、といったことが起こります。
この記事では、まず2つの制度を分けて整理し、そのうえで法人カードで支払えるのかどうか、個人事業主はどう考えればよいのかを順に見ていきます。税金そのものをカードで納める話は法人カードで税金を納付する方法で扱っています。

個人のふるさと納税は「個人の税金」の話
総務省のふるさと納税ポータルサイトでは、ふるさと納税について、自分の選んだ自治体に寄附を行った場合に、寄附額のうち2,000円を超える部分について所得税と住民税から原則として全額が控除される制度(一定の上限あり)と説明されています。
同ページには具体例として、年収700万円の給与所得者で扶養家族が配偶者のみの場合、30,000円のふるさと納税を行うと2,000円を超える部分である28,000円が所得税と住民税から控除される、という記載があります。また、控除を受けるためには原則として翌年に確定申告を行う必要があり、平成27年4月1日からふるさと納税ワンストップ特例制度が始まっていることも案内されています。
ここで押さえておきたいのは、控除されるのは個人の所得税と住民税であって、法人の税金ではないという点です。つまり、この制度に法人は登場しません。
個人のふるさと納税の仕組みや控除の流れは、解説書で一度確認しておくと手続きで迷いにくくなります。
法人向けの制度は「企業版ふるさと納税」
法人に用意されているのは、地方創生応援税制、通称「企業版ふるさと納税」という別の制度です。内閣府の企業版ふるさと納税ポータルサイトで制度概要が公開されています。
内閣府が公開している制度概要の資料には、地方創生の取組に対して企業が寄附した場合、法人関係税を税額控除する仕組みであり、最大約9割の軽減効果があると記載されています。内訳は、損金算入が約3割、税額控除が最大6割で、企業負担は約1割という説明です。資料では例として、1,000万円寄附すると最大約900万円の法人関係税が軽減されると示されています。
同資料に記載されている税額控除の内訳は次のとおりです。法人住民税は寄附額の4割を税額控除(法人住民税法人税割額の20%が上限)、法人税は法人住民税で4割に達しない場合にその残額を税額控除(ただし寄附額の1割を限度、法人税額の5%が上限)、法人事業税は寄附額の2割を税額控除(法人事業税額の20%が上限)です。数値は記事執筆時点で内閣府の資料に掲載されていたものです。
2つの制度を並べて比べる
| 項目 | 個人のふるさと納税 | 企業版ふるさと納税 |
|---|---|---|
| 所管 | 総務省 | 内閣府 |
| 寄附する人 | 個人 | 法人 |
| 軽減される税 | 所得税・個人住民税 | 法人住民税・法人税・法人事業税 |
| 自己負担 | 原則2,000円(一定の上限あり) | 約1割 |
| 返礼品 | 自治体から提供される場合がある | 経済的な見返りは禁止 |
| 最低額 | 制度上の最低額は設けられていない | 10万円以上の寄附が対象 |
| 対象外 | 控除額に所得に応じた上限あり | 本社が所在する自治体への寄附は対象外 |
内閣府の制度概要には、企業版ふるさと納税について、寄附企業への経済的な見返りは禁止されていること、本社が所在する地方公共団体への寄附は対象外であること、10万円以上の寄附が対象であることが明記されています。返礼品を目当てに法人で寄附する、という発想が成り立たない制度設計になっています。

企業版ふるさと納税で禁止されている「見返り」
内閣府地方創生推進事務局が公開している「寄附を行うことの代償として経済的な利益を供与すること」についての解説では、地方公共団体が寄附を行う法人に対して行うことが禁止されている行為の例が挙げられています。
- 寄附を理由とした補助金の交付
- 寄附を理由とした、他の法人の場合より低い金利での貸付け
- 入札や許認可での便宜の供与
- 寄附を理由とした換金性の高い商品(商品券やプリペイドカード等)の提供
- 寄附を行うことを、公共事業の入札参加要件とすること
一方で、禁止されていない行為として、感謝状の贈呈、自治体のホームページや広報誌で他の寄附者と並べて法人名を紹介すること、社会通念上許容される範囲内での記念品の贈呈などが挙げられています。寄附企業名の紹介は可能とされているため、地域貢献の対外的な発信という形では活用できます。
これらは地方公共団体の側の行為について定められたものです。制度の運用や解釈は改正されることがあるため、実際に寄附を検討する場合は内閣府の公式資料と、寄附先の自治体に直接確認してください。
企業版ふるさと納税を検討する前に、法人の税金の基本を中小企業向けの解説書で押さえておくと、税額控除の仕組みも理解しやすくなります。
支払いに法人カードは使えるのか
企業版ふるさと納税の寄附金の納付方法は、寄附先の自治体が指定します。納付書による払込や口座振込を案内している自治体もあれば、他の方法を用意している場合もあります。法人カードで支払えるかどうかは、寄附先の自治体に確認する必要があります。
また、企業版ふるさと納税は、自治体が策定した地域再生計画に位置付けられた事業への寄附であることが前提です。内閣府の資料には、地方公共団体が地方版総合戦略を基に地域再生計画を策定する必要があると記載されています。支払い方法の前に、対象となる事業かどうかの確認が先になります。
個人事業主が個人としてふるさと納税をする場合
ここが実務でいちばん混ざりやすいところです。個人事業主が行うふるさと納税は、事業ではなく個人としての寄附です。総務省が説明しているとおり、控除されるのは個人の所得税と住民税であり、事業の経費になるわけではありません。
そのため、事業用の法人カードでふるさと納税の支払いをすると、事業と無関係な支出が事業用の明細に混ざることになります。帳簿上は事業主貸などで処理することになり、月次の確認にも手間が増えます。公私を分ける仕組みづくりは法人カードと個人利用を分ける方法、混在が起きたときの考え方は法人カードの私的利用が問題になる理由で整理しています。

寄附の受領証明書は確定申告まで手元に残しておく書類なので、ファイルにまとめておくと探す手間が減ります。
制度の期限と実績
内閣府が公開している令和7年度税制改正の資料には、企業版ふるさと納税について、制度改善策を講じることを前提に、税額控除の特例措置を3年間(令和9年度まで)延長すると記載されています。期限のある制度である点は押さえておきたいところです。
また、内閣府の制度概要には活用実績として、寄附額631.4億円、寄附企業8,464社(いずれも令和6年度実績)、計画策定自治体1,613団体(令和8年4月1日時点)という数値が掲載されています。これらは記事執筆時点で同資料に示されていた数値です。

よくある質問
Q. 法人でふるさと納税をすれば返礼品はもらえますか?
企業版ふるさと納税では、寄附企業への経済的な見返りが禁止されていると内閣府の資料に記載されています。返礼品を前提とした制度ではありません。
Q. 自社の本社がある自治体に寄附しても控除を受けられますか?
内閣府の制度概要には、本社が所在する地方公共団体への寄附は対象外であると記載されています。あわせて、東京都および地方交付税の不交付団体で三大都市圏の既成市街地等に所在する市区町村は本制度の対象外である旨も示されています。
Q. いくらから寄附できますか?
内閣府の制度概要には、10万円以上の寄附が対象と記載されています。
Q. 社長が個人でふるさと納税をして、会社の経費にできますか?
個人としての寄附は個人の所得税・住民税の話であり、会社の経費とは別の扱いになります。会社が負担した場合の税務上の扱いについては、顧問税理士にご確認ください。
Q. 個人のふるさと納税を法人カードで払ってしまいました。
事業と無関係な支出が事業用の明細に混ざった状態です。会社のカードであれば返金による精算を、個人事業主であれば事業主貸としての処理を検討し、処理方法は顧問税理士に確認してください。
Q. 企業版ふるさと納税の手続きはどこから始めますか?
寄附したい自治体の地域再生計画に位置付けられた事業を確認するところからです。内閣府のポータルサイトに制度の概要やQ&A、認定された計画の情報が掲載されています。
まとめ
個人のふるさと納税は総務省が所管する個人の税金の制度で、2,000円を超える部分が所得税と住民税から原則として全額控除されます。企業版ふるさと納税は内閣府が所管する法人向けの制度で、損金算入と税額控除を合わせて最大約9割の軽減効果があるとされる一方、10万円以上という条件や、本社所在地への寄附は対象外という制限、そして経済的な見返りの禁止があります。
この2つは名前が似ているだけで、目的も対象も別の制度です。法人カードで支払えるかどうかは自治体ごとの案内によるため、寄附先に確認してください。そして個人事業主の方は、個人としてのふるさと納税は個人用のカードで払うと決めておくと、後の帳簿がすっきりします。
記載した内容は記事執筆時点で内閣府および総務省の公式ページに掲載されていたものです。制度は改正されることがあるため、実際の判断にあたっては必ず公式サイトで最新の情報をご確認いただき、税務の判断は顧問税理士にご相談ください。

