券面にカード番号が印字されていない「ナンバーレス」のカードが、法人カードにも広がっています。番号が書かれていないぶん、盗み見や置き忘れのときに情報が読み取られにくいという説明を目にした方も多いでしょう。
ただ、ナンバーレスはあらゆる不正利用を防ぐ仕組みではありません。何に効いて何に効かないのかを理解しておかないと、対策をしたつもりで穴が残ります。この記事では、ナンバーレスの仕組みと、法人で使うときに出てくる運用上の論点を整理します。券面デザインという観点は法人カードの券面デザインで選ぶときの考え方で扱っています。

ナンバーレスとは何か
三井住友カード ビジネスオーナーズの公式ページには、このカードが会員番号などが印字されていないナンバーレスカードであること、会員番号・有効期限などのカード情報はスマートフォンの「Vpassアプリ」から確認できることが記載されています。あわせて、Vpassアプリの登録が必要である旨も案内されています。
JCBのBiz ONEの公式ページでは、最短5分で発行できる申し込み方法の説明の中で、カード番号はMyJCBアプリ内でのみ確認可能であること、利用の際はアプリ対応の端末が必要であることが記載されています。掲載内容は2026年1月時点の情報である旨の注記があります。
いずれも共通しているのは、番号を券面から取り除き、アプリの中に移したという設計です。番号が存在しなくなったわけではありません。
ナンバーレスかどうか、また券面に何が印字されるかはカードごとに異なります。同じ発行会社でもラインナップによって仕様が違うため、申し込み前に各カードの公式ページで確認してください。
ナンバーレスが効く場面・効かない場面
| 場面 | ナンバーレスの効果 |
|---|---|
| 店頭でカードを手渡したとき、番号を控えられる | 券面に番号がないため読み取られにくい |
| 財布ごと紛失・盗難にあった | 券面からの番号流出は防げるが、カード自体の不正使用は別問題 |
| 背後からスマートフォンの画面をのぞかれた | アプリに番号があるため、画面の見せ方には注意が必要 |
| フィッシングサイトに番号を入力してしまった | 効果はない |
| 利用した加盟店から情報が流出した | 効果はない |
表からわかるとおり、ナンバーレスが対処しているのは券面から番号が読み取られるという経路です。オンライン側で番号が渡ってしまうケースには効きません。したがって、本人認証サービスの設定や利用通知など、他の対策と組み合わせて考える必要があります。
一般社団法人日本クレジット協会は、消費者向けにクレジットカード不正利用5つの対策というページを公開しています。カード利用者自身が取れる対策がまとめられているため、社内で共有する資料としても使えます。
カードそのものを持ち歩くときの補助として、スキミング防止機能のついたカードケースを使う方もいます。

法人で使うときに出てくる運用の論点
1. 経理が番号を確認できない
これがいちばん大きな論点です。番号がアプリの中にあるということは、アプリにログインできる人しか番号を確認できないということでもあります。三井住友カードの法人向けカードの案内では、各種手続きは本人からの対応が必要である旨が記載されています。
定期課金サービスの登録変更や、オンラインでの支払い設定を経理担当がまとめて行っている会社では、この点が運用に影響します。誰が番号にアクセスできるのかを整理したうえで、必要な手続きの担当を決めておいてください。社内ルールの作り方は法人カードを社員に持たせるときのルールづくりで扱っています。
2. スマートフォンが前提になる
アプリで番号を確認する設計なので、スマートフォンを持っていること、そしてアプリの登録が済んでいることが前提になります。機種変更のときにはアプリの再設定が必要です。追加カードを持つ社員がいる場合、その全員が同じ運用に対応できるかを確認しておく必要があります。
3. 紛失時の手順は変わらない
番号が印字されていなくても、カードを失くしたときにやるべきことは変わりません。速やかにカード会社へ連絡し、利用停止と再発行の手続きを取ります。手順は法人カードを紛失したときの対応にまとめています。
財布やカードケースの置き忘れが心配な場合は、スマートフォンで位置を確認できる紛失防止タグを補助として使う方法もあります。
ナンバーレスであることをもって、不正利用が起きないと考えるのは適切ではありません。補償の条件や範囲はカード会社の会員規約に定められており、状況によって扱いが異なります。加入しているカードの規約を確認しておいてください。
ナンバーレスと合わせて設定したいこと
利用通知
決済のたびに通知が届くようにしておくと、身に覚えのない利用に早く気づけます。追加カードを持たせている場合も、通知の設定を促しておくと発見が早くなります。
本人認証サービス
オンラインの決済時に追加の認証を求める仕組みです。設定方法はカード会社によって異なるため、会員サイトの案内を確認してください。不正利用対策全般は法人カードの不正利用対策で整理しています。
月次の明細確認
結局のところ、異常をいちばん見つけやすいのは明細の確認です。通知を見逃しても、月次で全行に目を通していれば気づけます。確認の習慣づくりは法人カードの利用明細を管理する方法を参考にしてください。

導入するときに社内で決めておくこと
ナンバーレスのカードを法人で導入するなら、配る前に次の3点を決めておくと運用が安定します。
1つ目は、アプリの登録を誰がいつ行うかです。登録が済んでいないと番号を確認できず、オンラインでの支払い設定が止まります。カードが届いた当日に登録まで済ませる、というところまで手順に入れておくと抜けません。
2つ目は、定期課金サービスの登録を誰が担当するかです。番号の確認が本人に限られるぶん、経理が代行していた作業を見直す必要が出てきます。棚卸しの方法は法人カードでサブスクの支払いを管理する方法にまとめています。
3つ目は、画面を見せない運用です。番号がアプリにあるということは、画面を見られれば番号が見られるということでもあります。人前でアプリを開かない、共有の端末に登録しないといった基本を、配布時に伝えておいてください。
外出先で画面を横から見られにくくする補助として、スマートフォン用ののぞき見防止フィルムを使う方法もあります。

ナンバーレスのカードを選ぶときに見るところ
ナンバーレスであること自体は、選ぶ理由の一つに過ぎません。実際に選ぶときは、次の点を合わせて確認してください。
- 年会費と、無料になる条件(年会費無料の法人カードは本当に無料かを参照)
- アプリで確認できる情報の範囲
- 追加カードを発行できる枚数と、追加カードの年会費
- 利用者ごとに限度額を設定できるか
- 会計ソフトとの連携に対応しているか
参考として、記事執筆時点で公式ページに掲載されていた年会費は、三井住友カード ビジネスオーナーズが永年無料、JCB Biz ONE 一般が永年無料、JCB Biz ONE ゴールドが5,500円(税込・初年度無料、年間利用額100万円以上で翌年度も無料)でした。条件は改定されることがあるため、申し込み前に公式サイトでご確認ください。
三井住友カード ビジネスオーナーズの公式ページには、登記簿謄本・決算書の提出が不要である旨も記載されています。申込時の必要書類は会社の状況によって負担が変わる部分なので、券面の仕様と合わせて確認しておくと申し込みがスムーズです。
よくある質問
Q. ナンバーレスのカードは店頭で使えますか?
券面に番号がないだけで、決済の仕組み自体は通常のカードと変わりません。タッチ決済への対応状況は法人カードのタッチ決済ガイドで扱っています。
Q. オンラインショップで番号を入力するときはどうしますか?
アプリを開いて番号を確認し、入力することになります。三井住友カード ビジネスオーナーズではVpassアプリ、JCB Biz ONEではMyJCBアプリで確認できると各社の公式ページに記載されています。
Q. スマートフォンを紛失したら番号は見られなくなりますか?
アプリへのログインには認証が必要ですが、端末を失くした場合の手続きはカード会社の案内に従ってください。カード自体の利用停止が必要かどうかも含めて、早めに問い合わせることをおすすめします。
Q. ナンバーレスなら不正利用の心配はなくなりますか?
券面から番号を読み取られる経路には効きますが、フィッシングや加盟店からの情報流出には効きません。本人認証サービスの設定や利用通知など、他の対策と組み合わせてください。
Q. 社員に持たせる追加カードもナンバーレスですか?
カードによって仕様が異なります。追加カードの券面や、利用者がアプリで確認できる範囲は、発行前に公式サイトで確認してください。
Q. ナンバーレスではないカードは危険ということですか?
そういうことではありません。番号の置き場所が違うだけで、どちらにも取るべき対策があります。自社の使い方に合った運用を選ぶことが優先されます。
まとめ
ナンバーレスは、券面に印字されていた会員番号などをアプリに移した設計です。三井住友カード ビジネスオーナーズやJCB Biz ONEの公式ページには、カード情報をアプリで確認する旨が記載されています。券面から番号が読み取られる経路には効きますが、オンラインでの流出には効きません。
法人で使う場合は、番号を確認できるのが本人だけになるという運用上の変化が最も大きな論点です。定期課金の登録や支払い設定を誰が行うのかを整理し、そのうえで利用通知や本人認証サービス、月次の明細確認を組み合わせてください。
記載した内容は記事執筆時点で各社および一般社団法人日本クレジット協会の公式ページに掲載されていたものです。仕様や年会費は変更されることがあるため、申し込みにあたっては必ず公式サイトで最新の情報をご確認ください。

