法人カードで税金を納められると知ると、次に浮かぶのが「では社会保険料はどうか」という疑問です。毎月まとまった金額が出ていく支出なので、カードに乗せられればポイントも資金繰りも効きそうに見えます。
結論から書きます。健康保険・厚生年金保険の保険料、および労働保険料について、公式に案内されている納付方法にクレジットカードは含まれていません。この記事では、日本年金機構と厚生労働省が公開している納付方法をそのまま確認したうえで、では何ができるのかを整理します。

健康保険・厚生年金保険の保険料の納付方法
日本年金機構が案内している方法は3つ
日本年金機構の「厚生年金保険料等の納付」のページでは、事業所における納付方法として次の3つが挙げられています(出典:日本年金機構 厚生年金保険料等の納付/更新日:2026年4月1日)。
| 方法 | 内容 |
|---|---|
| 1.口座振替 | 「保険料口座振替納付(変更)申出書」を提出し、届け出た口座から引き落とす |
| 2.金融機関の窓口 | 「保険料納入告知書」(納付書)を切り離さずに提出して納付する |
| 3.電子納付(Pay-easy) | 告知書に記載された収納機関番号・納付番号・確認番号を使って払込手続きを行う |
電子納付のチャネルとしては、インターネットバンキング、モバイルバンキング、Pay-easyマークの表示があるATM、テレフォンバンキングが挙げられています。いずれも金融機関の口座から資金を動かす方法であり、クレジットカードによる納付は記載されていません。
同ページには「電子納付により保険料を納付した場合は、領収証書が発行されませんので、領収証書が必要な方は金融機関等の窓口に持参して納付してください」との記載もあります。領収証書が必要な場面がある事業所は、電子納付に切り替える前に確認してください。
窓口で納付した領収証書は、月ごとにファイルへまとめて保管しておくと、後から確認するときに探しやすくなります。
納付期限は翌月末日
同ページは「納付期限は、納付対象月の翌月末日※です。(例:4月分保険料の納付期限は5月末日)」とし、末日が休日の場合は翌日以降の最初の営業日になると説明しています。保険料額は事業主から提出された届出内容をもとに算定され、毎月20日頃に「保険料納入告知書」または「保険料納入告知額・領収済額通知書」が事業所へ送付されるとされています。
告知書が届いてから期限まで、およそ10日ほどしかありません。この短さが、口座振替を選ぶ事業所が多い理由でもあります。

労働保険料の納付方法
年度更新の手続きと納付場所
厚生労働省は労働保険の申告・納付について、「原則として例年6月1日から7月10日までの間に、労働基準監督署、都道府県労働局及び金融機関で手続を行うことになります」と案内しています。あわせて「ハローワーク(公共職業安定所)では申告・納付は行えません」とも明記されています(参考:厚生労働省 労働保険制度(雇用保険・労災保険))。
口座振替という選択肢
厚生労働省は労働保険料等の口座振替納付についても案内しています。同省の説明によると、これは「事業主の皆様が、労働保険料や石綿健康被害救済法に基づく一般拠出金の納付について、口座を開設している金融機関に口座振替納付の申し込みをすることで、届出のあった口座から金融機関が労働保険料及び一般拠出金を引き落とし、国庫へ振り替えることにより、納付するもの」とされています(出典:厚生労働省 労働保険等の口座振替納付)。
同ページでは、口座振替のメリットとして「手数料がかかることなく、自動的に引き落とし、納付することができる」「納め忘れの心配がない」「保険料の引き落としまでに最大2か月のゆとり」が挙げられています。
ここは見落とされがちな点です。口座振替を使うと、納付書で納める場合より引き落としが後ろにずれます。カードを使わなくても、支払いのタイミングを後ろに動かす手段は制度として用意されているということです。振替日と申込期限は年度ごとに公表されるため、厚生労働省のページで最新の日程をご確認ください。
そしてこのページにも、クレジットカードによる納付についての記載はありません。
では、税金との違いはどこにあるのか
国税はクレジットカード納付の制度がある
比較のために国税の側を見てみます。国税庁は、クレジットカード納付を「インターネット上でのクレジットカード支払の機能を利用して『国税クレジットカードお支払サイト』を経由し、国税庁長官が指定した納付受託者へ国税の納付の立替払いを委託することにより、国税を納付する手続」と説明しています。納付受託者は株式会社エフレジと明記されています(出典:国税庁 G-2-4 クレジットカード納付の手続)。
つまり国税の場合は、「納付受託者を指定する」という制度上の仕組みがあって初めてカードで納められる形になっています。仕組みが用意されていない公租公課は、カードで払いようがないということです。
手数料も無視できない
国税庁が公開している決済手数料は、納付税額1円〜10,000円で99円(税込)、10,001円〜20,000円で198円(税込)と続き、「以降も同様に10,000円を超えるごとに決済手数料が加算されます」とされています。国税庁は「なお、決済手数料は、国の収入になるものではありません」とも明記しています。
10,000円ごとに99円という水準は、納付額に対しておよそ1%弱です。還元率が1%を下回るカードで納めると、ポイントより手数料のほうが大きくなる計算になります。この損得の詳細は「法人カードで税金を納付する方法|決済手数料とポイント還元の損得を整理」で扱っています。

カードが使えない前提で、何ができるか
1.納付方法そのものを口座振替に寄せる
社会保険料も労働保険料も、口座振替の仕組みが用意されています。納付書を持って窓口に行く手間がなくなり、納め忘れも防げます。労働保険料については、引き落としまでの期間にゆとりが生まれる点も厚生労働省が案内しています。
2.引き落とし口座に資金を残す設計にする
社会保険料は毎月末、労働保険料は年度更新の時期に、まとまった金額が動きます。この時期に口座残高が薄くならないよう、他の支払いをカードに寄せて資金を残すという考え方ができます。カードで払えない支出があるからこそ、払える支出をカードに寄せる意味が出てきます。
- 末日に引き落とされる社会保険料の直前に、口座から出ていく支払いを重ねない
- カードに寄せられる経費(消耗品・広告費・サブスク・出張費など)は寄せて、口座の出金を減らす
- カードの引き落とし日と社会保険料の納付期限を、カレンダーで重ねて確認する
- 年度更新の時期は、他の大きな支出と重ならないよう前倒しで調整する
支払日を並べて資金の出入りを見通す作業に慣れていない場合は、資金繰り表の作り方をまとめた本を参考にする方法もあります。

3.どうしても資金が足りないときは、猶予の制度を確認する
日本年金機構のサイトには、厚生年金保険料等の猶予(換価の猶予・納付の猶予)についてのページが用意されています。厚生労働省のサイトにも、労働保険料等を一時に納付できない場合の猶予制度についての案内があります。
資金が足りないときに、カードのキャッシングやリボ払いで穴埋めしようとするのは順番が逆です。まずは年金事務所・労働局の窓口に相談してください。制度として用意されている手段があるのに、手数料の高い方法を先に選ぶ理由はありません。リボ払いの仕組みは「法人カードのリボ払いに潜む注意点|手数料の仕組みとリスクを正しく理解する」で整理しています。
経理上の扱い
社会保険料は、従業員から預かった分(給与から控除した被保険者負担分)と、会社が負担する分をあわせて納付する構造になっています。日本年金機構は、事業主は毎月の給料および賞与から被保険者負担分の保険料を差し引いて、事業主負担分の保険料とあわせて納付期限までに納めると説明しています。
つまり納付額の一部は、従業員から預かっているお金です。カードで払えるかどうか以前に、この性質を踏まえた管理が必要になります。預かるお金と自社のお金を分ける考え方は「士業事務所と法人カード|実費の立替と報酬を分けるための決済の組み立て方」でも扱っています。
保険料の控除と納付の流れを担当者間で共有するには、社会保険と給与計算の実務をまとめた本を1冊置いておくと便利です。
よくある質問
Q1.社会保険料をクレジットカードで納付できますか
日本年金機構が「厚生年金保険料等の納付」のページで案内している納付方法は、口座振替・金融機関の窓口・電子納付(Pay-easy)の3つです。クレジットカードによる納付は記載されていません。制度は変わることがあるため、実際に手続きをする前に同ページの最新の記載をご確認ください。
Q2.労働保険料はクレジットカードで納付できますか
厚生労働省の労働保険関係のページおよび口座振替納付のページには、クレジットカードによる納付についての記載はありません。こちらも手続き前に公式ページの最新の記載をご確認ください。
Q3.国税はカードで払えるのに、なぜ社会保険料は払えないのですか
国税には、国税庁長官が指定した納付受託者へ立替払いを委託するという制度上の仕組みが用意されています。カード納付は、こうした仕組みが用意されて初めて成り立ちます。
Q4.口座振替にすると何が変わりますか
納め忘れを防げます。労働保険料については、厚生労働省が「保険料の引き落としまでに最大2か月のゆとり」があると案内しています。振替日は年度ごとに公表されるため、公式ページでご確認ください。
Q5.社会保険料の支払いに使う口座は、法人カードの引き落とし口座と同じでよいですか
同じでも構いませんが、引き落とし日が近いと残高が不足するリスクがあります。日程を並べて確認してください。口座の指定については「法人カードの引き落とし口座はどう指定する|法人口座・屋号付き口座の設定方法」で扱っています。
Q6.資金が足りないときはどうすればよいですか
年金事務所や労働局に、猶予制度について相談してください。日本年金機構のサイトには厚生年金保険料等の猶予に関するページが、厚生労働省のサイトには労働保険料等を一時に納付できない方のための猶予制度に関する案内があります。
まとめ
社会保険料と労働保険料は、公式に案内されている納付方法にクレジットカードが含まれていません。ここは希望的観測で判断せず、日本年金機構と厚生労働省のページを直接確認するのが確実です。制度は改正されることがあるため、この記事の内容も参考として扱い、手続きの前に必ず公式サイトでご確認ください。
そのうえで実務としてできるのは、納付方法を口座振替に寄せて確実性を高めること、そしてカードで払える支出をカードに寄せて、納付日に口座の残高を厚くしておくことです。法人カードは、公租公課そのものを軽くする道具ではなく、支払いの順番を組み替えるための道具だと考えると使いどころが見えてきます。
