登記をする、契約書を交わす、許認可を取る。会社を運営していると、収入印紙を貼る場面や、登録免許税を納める場面が定期的にやってきます。金額がまとまることもあるため、「これもカードで払えないか」と考える方は多いはずです。
この2つの税は、他の税目と納付の仕組みが違います。納付方法そのものが法令で定められている部分があり、支払う側が自由に選べるわけではありません。この記事では、国税庁が公開している内容をもとに、それぞれの納め方と、カードが関われる範囲を整理します。

印紙税の納付は、原則として収入印紙を貼る
国税庁が示している納付の形
国税庁は印紙税の納付について、次のように説明しています。
「印紙税の納付は、通常、作成した課税文書に所定の額面の収入印紙を貼り付け、印章または署名で消印することによって行います。」(出典:国税庁 No.7131 印紙税を納めなかったとき/令和8年4月1日現在法令等)
つまり、印紙税は納付書で税務署に納めるのではなく、課税文書そのものに印紙を貼り、消印することで納付が完了するという形をとっています。この構造が、他の税目と大きく違う点です。
消印は印章または署名で行うとされているため、契約書を作る機会が多い会社では、社名や住所のゴム印を用意しておくと押印の手間を減らせます。
納めなかった場合の扱い
同じページには、納付しなかった場合の取り扱いも示されています。印紙を貼る方法で納付することとなる課税文書の作成者が、納付すべき印紙税を課税文書の作成の時までに納付しなかった場合には、その納付しなかった印紙税の額とその2倍に相当する金額との合計額、すなわち当初に納付すべき印紙税の額の3倍に相当する過怠税が徴収されることになるとされています。
ただし、課税文書の作成者が所轄税務署長に対し印紙税不納付事実申出書を提出した場合で、その申出が調査があったことにより過怠税の決定があるべきことを予知してされたものでないときは、納付すべき印紙税の額の1.1倍に軽減されるとされています。また、貼り付けた印紙を所定の方法で消印しなかった場合には、消印されていない印紙の額面に相当する金額の過怠税が徴収されるとも記載されています。
同ページには「なお、過怠税は、その全額が法人税の損金や所得税の必要経費には算入されませんのでご注意ください」との記載もあります。過怠税は経費になりません。印紙税そのものは租税公課として扱われるのが一般的ですが、過怠税は扱いが異なります。
貼りすぎたときは還付の対象になることがある
国税庁は、課税文書に所定の印紙税額を超える収入印紙を貼り付けてしまったような場合には、印紙税の過誤納金として還付の対象となる場合があるとしています。還付の対象として挙げられているのは、貼り付けた収入印紙が過大となっているもの、課税文書に該当しない文書に貼り付けてしまったもの、課税文書の用紙に貼り付けたものの使用する見込みがなくなったものです。
また、汚損またはき損されていない収入印紙は最寄りの郵便局で他の額面の収入印紙と交換でき、その場合は提出する収入印紙1枚につき5円の手数料がかかるとされています。なお、収入印紙を現金に交換することはできないと明記されています(出典:国税庁 No.7130 誤って納付した印紙税の還付/令和8年4月1日現在法令等)。

登録免許税の納付方法は3種類ある
国税庁が挙げている納付方法
登録免許税については、国税庁が納付方法を明確に整理しています。
「登録免許税は、次の方法により納付します。1 現金納付 現金で納付をし、その領収証書を登記等の申請書等に貼り付けて提出します。2 印紙納付 税額が30,000円以下の場合等には印紙納付をすることができます。3 キャッシュレス納付 キャッシュレス納付の方法として、次のようなものがあります。(1) インターネットバンキング等 登記機関から得た納付情報(ペイジーで使用する番号)によりインターネットバンキングや金融機関のATMを利用して納付します。(2) クレジットカード等 登記や登録等を所管する省庁の長が指定したクレジットカード、電子マネー、QRコード等により納付します。」(出典:国税庁 No.7190 登録免許税のあらまし/令和8年4月1日現在法令等)
ここは重要なので丁寧に読みます。登録免許税には、クレジットカード等によるキャッシュレス納付という方法が制度として挙げられています。ただし条件が付いています。「登記や登録等を所管する省庁の長が指定した」ものに限られる、という点です。
使えるかどうかは手続きごとに違う
同じページには、次の注記も添えられています。
「(注) 登記や登録等によって、利用できる納付の方法や納付の期限が異なります。詳しくは、その登記や登録等の申請・届出等手続を所管する各省庁等のホームページ等でご確認ください。」
つまり「登録免許税はカードで払える/払えない」と一律に言うことはできません。不動産登記なのか、商業登記なのか、特許や免許なのかによって、使える納付方法が変わります。実際に手続きをする前に、その手続きを所管する官公署のページで確認するのが確実です。
登録免許税は何に課税されるか
国税庁は、登録免許税について「不動産、船舶、航空機、会社、人の資格などについての登記や登録、特許、免許、許可、認可、認定、指定および技能証明について課税されます」と説明しています。納税義務者は登記や登録等を受ける者です。課税標準および税率は「登録免許税の税額表」で示されており、不動産の所有権の移転登記のように価額に一定の税率を乗じるものと、商業登記の役員登記のように1件当たりの定額になっているものがあると説明されています。
会社の設立や役員変更などの登記では、法務局に届け出る代表者印を使う場面があります。手続きを控えている場合は、印鑑の準備状況もあわせて確認しておくと安心です。
国税のカード納付サイトでは、この2つは扱いが違う
国税庁の「国税クレジットカードお支払サイト」については、利用可能税目を「全ての税目」としたうえで、例外が2つ挙げられています。そのうちのひとつが印紙税と登録免許税です。
「2『印紙税』や『登録免許税』 法令の規定により、印紙を貼り付けて納付しなければならない場合は、『国税クレジットカードお支払サイト』をご利用できません。」(出典:国税庁 G-2-4 クレジットカード納付の手続)
読み方に注意が必要です。「印紙税と登録免許税は一切カードで払えない」ではなく、「印紙を貼り付けて納付しなければならない場合は、このサイトを使えない」と書かれています。手続きごとの扱いは、やはり所管する官公署の案内で確認することになります。

やってはいけない考え方
印紙をカードで買って実質カード払いにする、という発想
「収入印紙をカードで購入すれば、実質的にカード払いになるのでは」という発想を目にすることがあります。これは勧められません。
まず、消費税の扱いが通常の物品購入と異なります。国税庁は非課税取引の例として「日本郵便株式会社などが行う郵便切手類の譲渡、印紙の売渡し場所における印紙の譲渡および地方公共団体などが行う証紙の譲渡」を挙げています(出典:国税庁 No.6201 非課税となる取引/令和7年4月1日現在法令等)。印紙は「買い物」とは違う扱いを受けている、ということです。
収入印紙の購入手段を工夫して還元を得ようとする方法は、この記事では扱いません。印紙税は課税文書に印紙を貼って消印することで納付する税であり、購入経路を変えても納税額は1円も変わりません。また、カード会社の会員規約では利用の目的や方法に制限が設けられていることがあります。規約の確認については「法人カードの会員規約はどこを読むか|適用される規約の見分け方と社内で起きやすい違反」をご覧ください。
まとめ買いしておけば安心、という発想
先ほど確認したとおり、収入印紙は現金に交換できません。他の額面の印紙への交換はできますが、1枚につき5円の手数料がかかるとされています。使う見込みのない印紙を大量に持っておくのは、資金を寝かせることになります。
経理と証憑の扱い
印紙代の記録
印紙を購入したときの領収書や、どの契約書にいくら貼ったかの記録は残しておきたいところです。金庫に印紙を保管している会社では、購入した枚数と使用した枚数の管理をしていないと、残高が合わなくなります。
印紙や現金を事務所で保管する場合は、鍵付きの手提げ金庫にまとめ、出し入れの記録を残す運用にしておくと管理しやすくなります。
登録免許税の記録
登記手続きを司法書士に依頼している場合、登録免許税は司法書士が立て替えて納め、後から実費として請求されることがあります。このとき、報酬と実費が請求書の上で区分されているかどうかが重要になります。区分の意味は「士業事務所と法人カード|実費の立替と報酬を分けるための決済の組み立て方」で扱っています。
また国税庁は、非課税取引の例として「国、地方公共団体、公共法人、公益法人等が法令に基づいて行う一定の事務に係る役務の提供で、法令に基づいて徴収される手数料」を挙げ、その一定の事務の例として登記、登録、特許、免許、許可、検査、検定、試験、証明、公文書の交付などを示しています。登記に関する法定の手数料は、消費税の扱いが一般の役務提供と異なるという点は押さえておきたいところです。
カードが役に立つのはどこか
印紙税・登録免許税そのものをカードで軽くすることはできません。では法人カードは無関係かというと、そうでもありません。
- 登記や許認可にあわせて発生する周辺の支出(書類の取得、郵送費、交通費、専門家への報酬)はカードに乗せられる場合がある
- 公租公課の納付日に口座残高を厚くするため、他の支出をカードに寄せる
- 登記が重なる時期は支出が集中するため、利用可能枠を事前に確認しておく
- 電子契約に切り替えることで、そもそも課税文書の作成自体を減らせる場面がある
設立や登記のタイミングでの資金の動かし方は「起業の準備で法人カードをいつ申し込むか|設立から発行までの順番と空白期間の埋め方」で扱っています。国税・地方税の納付でのカードの使い方は「法人カードで税金を納付する方法|決済手数料とポイント還元の損得を整理」をご覧ください。

よくある質問
Q1.印紙税をクレジットカードで納付できますか
国税庁は、印紙税の納付は通常、課税文書に収入印紙を貼り付けて消印することにより行うと説明しています。また国税クレジットカードお支払サイトについては、法令の規定により印紙を貼り付けて納付しなければならない場合は利用できないとしています。
Q2.登録免許税はカードで払えますか
国税庁は納付方法として現金納付・印紙納付・キャッシュレス納付を挙げ、キャッシュレス納付には所管する省庁の長が指定したクレジットカード等による方法があるとしています。ただし利用できる納付方法は登記や登録等によって異なるとされているため、その手続きを所管する官公署のページでご確認ください。
Q3.印紙を貼り忘れるとどうなりますか
国税庁は、納付しなかった印紙税の額とその2倍に相当する金額の合計額、すなわち当初に納付すべき額の3倍に相当する過怠税が徴収されるとしています。所轄税務署長に印紙税不納付事実申出書を提出した場合で一定の要件を満たすときは1.1倍に軽減されるとされています。
Q4.貼りすぎた印紙は返してもらえますか
国税庁は、所定の印紙税額を超える収入印紙を貼り付けてしまった場合などは、印紙税の過誤納金として還付の対象となる場合があるとしています。申請には印紙税過誤納確認申請(兼充当請求)書の提出と、過誤納となっている文書の提示が必要とされています。
Q5.過怠税は経費になりますか
国税庁は「過怠税は、その全額が法人税の損金や所得税の必要経費には算入されません」としています。
Q6.電子契約にすれば印紙税はかかりませんか
課税文書に該当するかどうかは、文書の内容と作成の形態によって判断されます。個別の判定は、国税庁の案内や税務署、顧問税理士にご確認ください。この記事では判断の基準までは扱っていません。
まとめ
印紙税は、課税文書に収入印紙を貼って消印することで納付する税です。登録免許税は、現金納付・印紙納付・キャッシュレス納付という3つの方法が示されており、キャッシュレス納付にはクレジットカード等による方法が含まれていますが、利用できるかどうかは手続きを所管する省庁の指定によります。
「カードで払えるか」を一言で答えられない領域なので、実際の手続きの直前に、その登記・登録を所管する官公署のページで納付方法を確認するのがいちばん確実です。制度は改正されることがあるため、この記事の内容も参考として扱ってください。
